急がれる強固な南西諸島防衛態勢の構築


 沖縄県石垣市の尖閣諸島をめぐり、米国や中国の高官らの緊迫した発言が相次いでいる。いずれも注目すべきであり、わが国として安穏としていられない。2日には石垣市長選が行われ、陸上自衛隊の配備に理解のある中山義隆市長が再選された。これを追い風として政府は南西諸島における強固な防衛態勢の構築を急ぐべきである。

陸自警備部隊の配置

 米太平洋艦隊の情報戦部門を統括する幹部によると、中国人民解放軍は昨秋、東シナ海で尖閣諸島や琉球諸島南部の島嶼群の奪取を想定した大規模な軍事訓練を行った。

 ラッセル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)も米議会で、1月にバーンズ国務副長官と訪中した際、尖閣諸島について「中国海洋当局による危険度の高い活動が前例のないほど際立っている」と、中国側に懸念を伝えたと証言した。

 一方の中国も、尖閣諸島の上空を含む空域に防空識別圏を一方的に設定。王毅外相は「妥協の余地はない」と言明し、また全国人民代表大会(全人代)に参加している軍関係者も「(日本との)戦争は恐れない」といった発言を行っている。

 日中間の緊張が高まれば高まるほど重要なのが、日米同盟の強化であり、米側のアジア太平洋地域への関与政策の明確化だ。心強いのは、米国がこのほど国防予算を削減する中、「アジア重視」を継続させる国防戦略(QDR)を発表したことである。それによると、日本を取り巻く情勢に対応するため海軍力を増強するだけでなく、2020年までに海軍の装備の6割を太平洋地域に配備する。

 この国防戦略を補完する上で、わが国の最大の役割は、自衛隊の配備充実であり、集団的自衛権行使容認のための憲法解釈の変更である。中でも、国の守りの最前線である南西諸島地域への陸自の配備は手薄で、沖縄本島以外にはない。そのため、政府は昨年12月、中期防衛力整備計画で南西地域の島嶼に陸自の警備部隊を配置する方針を打ち出した。

 防衛省は、石垣島、宮古島などを候補地に検討しているが未定だ。尖閣諸島が所在する石垣市への配備が最適だろうし、宮古島や与那国島に機能を分散させ総合的に対応するのもいい。

 中山市長は「防衛・安全保障は国民の重要な案件で、国の専権事項である。どの場所にどの部隊を配置するかは国が考えること」だとしつつ、「提案が上がればしっかりと意見を聞き、議論を重ねながら判断する」と述べている。政府は早急に丁寧かつ説得力ある説明を同市ならびに住民に行わねばならない。

自衛隊法改正の提起も

 その際、肝要なのは同地域での漁業の安全確保だ。尖閣諸島の周辺海域では中国船の領海侵犯が相次いでいる。海上保安庁の対処能力を上回る数の船によって偽装漁民(軍人)が上陸する恐れもある。

 現在、集団的自衛権について提案をまとめている有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)ではこうした事態に対処できる自衛隊法の改正も併せて提起してもらいたい。

(3月10日付社説)