アフリカ外交で「共存共栄」の関係を築け


 安倍晋三首相はコートジボワール、モザンビーク、エチオピアのアフリカ3カ国を歴訪した。最大の成果は「新植民地主義」とも批判されている中国のアフリカ支援とは違い、人材育成と地域振興を狙った日本流の支援策を打ち出したことだ。この点は高く評価される。

 中国との違いを強調

 日本の首相の本格的なアフリカ訪問は、2006年の小泉純一郎氏以来、約8年ぶりだった。豊富な天然資源に恵まれ、高い成長率を示しているアフリカは「最後のフロンティア」とも言われる。

 しかし、中国が豊富な資金力を背景に各地で開発を進めており、日本の出遅れが指摘されていた。今回の安倍首相の訪問には、商機拡大を目指す商社や建設など日本の企業関係者も多く同行した。

 最近の10年間で中国の進出は勢いを増している。首相が訪れた3カ国でも各地で中国語の看板が見られ、ビルや空港施設の建設支援などで日本よりもはるかに先行し目立っている。だが中国の場合、労働力として中国人を本国から投入するなどしているので、現地に雇用や技術移転をもたらさず、アフリカ側には不満がある。

 首相は今回、人材育成や環境技術移転、病院・学校建設などの振興策をひとまとめにした「官民一体」の支援を売り込んだ。長期的な視点で、現地との「共存共栄」の関係構築を目指すものだ。内外記者会見では「日本は人材を育成し、日本の知見を伝え、ともに汗を流すことで自力で立ち上がる支援を行っている」と述べ、経済援助の見返りに資源を獲得する中国との違いを強調した。

 さらに、エチオピアのアディスアベバにあるアフリカ連合(AU)本部で行った政策スピーチには「民主主義」という文言を盛り込んだ。共産党一党独裁体制の中国を念頭に置いたもので、日本の利点をアピールした形だ。

 人材育成はインフラ整備などと違って目立ちにくく、結果が出るまでに時間がかかる。しかし、これからのわが国のアフリカ政策では「人づくり」を中心に、成長を地道に支援していくことが求められよう。

 昨年、アフリカ39カ国の首脳が来日した。5年に1度、日本で開催されるアフリカ開発会議(TICAD)出席のためだ。その際、日本への熱い期待が表明された。今回の歴訪は、その期待に応えるためのものでもあった。

 首相は「機会があれば何度でもアフリカを訪問したい」と再訪に強い意欲を示したが、今後も首脳間の信頼関係を強めていく必要がある。

 首相は「地球儀を俯瞰(ふかん)する戦略的外交」を掲げている。成長への躍動感あふれるアフリカの安定と繁栄は、世界の平和と日本経済のさらなる発展に欠かせない。

 「人づくり」に知恵を

 日本ならではの支援で、アフリカ諸国との共存共栄の関係をいかに築き上げるかがこれからの課題となる。

 この意味で、政府は「人づくり」のためにもっと知恵を出すべきだ。

(1月16日付社説)