縦貫鉄道にかける期待と不安


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 沖縄県は全国の都道府県で唯一鉄道がない。2003年に那覇市内に開業した沖縄都市モノレールは「軌道」と分類されるため、鉄道ではない。慢性的な交通渋滞の解消や観光客の交通手段として期待されるのが、沖縄本島を南北に縦断する鉄道だ。

 有識者らでつくる鉄軌道検討委が南北縦断ルートの案をとりまとめたことを受け、県経済団体会議(議長・石嶺伝一郎県商工会議所連合会会長)が4日、翁長雄志知事に鉄軌道計画推進を要請した。

 計画では、那覇市から名護市までの70㌔を約1時間で結ぶ。那覇市から宜野湾市までの市街地は地下トンネルを通り、名護市に近い恩納村は山岳トンネルや高架を通る。

 西海岸の主要観光地の北谷町と恩納村、さらには人口の多い中部の沖縄市とうるま市を通過するという、観光客にとっても地域住民にとっても使い勝手が良い案だ。

 沖縄県は総事業費を6100億円、建設期間を15年と見積もる。国や県、市町村などの予算で鉄道施設を整備した上で、民間企業が運営する「上下分離方式」を取った場合、開業後30年から40年程度で黒字化すると見込む。県は今年度、調査促進事業費として1億円の予算を計上。今回の案を基に、事業主体や資金調達の方法、駅の数や場所などの詳細の検討に入ることになっている。

 今後、翁長知事が国に要望する形になるが、県幹部は「国は採算性を疑問視しており、予算の確保に後ろ向き。実現するかどうかは不透明」だと話す。米軍普天間飛行場の県内移設をめぐって国との関係が悪化していることは懸念材料。それどころか、県が沖縄本島東南部に建設を予定している大型会議施設の一括交付金も認められていない。

(T)