故亀川正東氏から学ぶもの


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 英米文学者、評論家の亀川正東氏が103歳で人生の幕を閉じた。宮古島に生まれ、早稲田大学英文科を卒業し、文学博士号を取得。琉球大学、北九州大学大学院教授、九州女子大学教授、アメリカ・コロラド大学客員教授などを歴任した。

 何度か自宅にお邪魔したことがあるが、日本初のノーベル文学賞受賞作家、川端康成による「一期一會」という揮毫(きごう)、ツーショット写真を見て圧倒されたことを思い出す。文学者でありながら熱い教育論者でもあった。

 共産主義批判は舌鋒鋭かった。「真赤な国の真赤な嘘 ソ連亡命者たちの衝撃的な告白 ペレストロイカはいつか必ず逆戻りする」(閣文社)など数々の書も手掛けた。

 「ステイヤング」(万年青年)をよく口にし、「男はおしゃれをすれば長生きする。女性は若さを保つ潤滑油」と語り、カラオケのあるバーによく通っていた。おかげで、「風邪を引いたことがない」と、沖縄のかつての健康長寿の鑑のような生き様を示してくれた。

 2006年4月、本紙「ビューポイント」で現代の社会問題に警鐘を鳴らしたが、あれから10年以上が過ぎた現在も当てはまる内容だ。

 「親が我が子を殺すかと思うと、子が親を殺す昨今の日本の世情。一体、日本の家庭は死んだのか。日本の教育はどうなっているのか。

 (中略)

 その国の青年を見れば、その国の将来が読めると言われるが、このままで果たして日本に明日はあるのだろうか。戦後の教育によって、日本人の質は本当にダメになったのだ」と国の行く末を憂いながらも教育復興が急務であるとの自論は衰えなかった。故亀川氏から学ぶものは多い。合掌。

(T)