番犬にピッタリの天然記念物


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 2018は戌年。当然のごとく、「犬」に注目が集まるが、沖縄には沖縄県原産の琉球犬という犬種がある。琉球犬はフィリピンやインドネシアなど東南アジア系で縄文時代以前に琉球列島に渡ったとされ、沖縄本島北部のやんばる地方と、八重山諸島に棲息してきたといわれている。

 トラのような毛色から「トゥラー」、または、赤茶色のものは「アカイン」として地元では親しまれている。

 琉球犬は人懐っこい上におとなしいが、暑さに強い。外見は怖そうに見えるが、嗅覚が鋭く無駄に吠えないため、番犬にはピッタリ、というのが定説だ。耳がピンと立ち、左右の間隔が広く、胸が厚い。四肢の爪が6本で、後ろ足には狼爪があるのが特徴である。

 かつてイノシシや鳥の猟犬として活躍したといわれ、1995年には天然記念物に指定されている。琉球犬として認定された基礎犬が国内に百数十頭しかおらず、入手は難しい。

 そのため、絶滅を防ごうと、琉球犬保存会という組織が2010年に設立され、計画交配による保存と増殖、普及に務めてきたが、繁殖の難しさや費用負担が理由で現在は休眠状態にある。

 また、南大東島には大東犬がいる。八丈島からの移住者によって開拓が始まった1900年頃、彼らによって持ち込まれたといわれている。足が非常に短く、がに股なのが特徴。島外では名護市で繁殖に成功しているが、純血種は琉球犬よりもさらに少ない50頭程度とされている。

 琉球犬と大東犬ともに一般公開されているのは、全国でも沖縄市にある動物園「沖縄こどもの国」しかない。ここでは他に、ケラマジカ、ヨナグニウマ、アグーなど、沖縄特有の野生動物を見ることもできる。

(T)