知事の訪米に成果あった?


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 トランプ米政権の誕生を受け、翁長雄志知事は稲嶺進・名護市長、知事派の実業家らを引き連れてこのほど、米国ワシントンを訪問した。翁長氏は2014年12月に知事に就任して以来、3度目のワシントン訪問となる。

 今回会談したのは、国務省のヤング日本部長、国防総省のヴォスティ日本部長代行、リベラル系下院議員、同系のシンクタンク研究員らだ。政府高官や政策決定に影響力のある人はいなかった。

 5日に帰国した翁長氏は「(訪米に)大きな成果があった」と宣伝しているが、疑問視する向きは非常に多い。

 何よりも、タイミングが悪かった点だ。マティス米国防長官の日本訪問と時期が重なった。マティス長官は安倍晋三首相や稲田朋美防衛相と会談し、「辺野古移設が唯一」と改めて確認した。これに対し、本紙ワシントン特派員によると、翁長氏は訪米を総括する3日の記者会見で「沖縄県民に対して大変失礼なやり方ではないか」と反発したという。トランプ政権誕生後、米国の長官の初来日を避けるように訪米したことの方がよほど問題だろう。

 辺野古に「新基地」を造らせないというのなら、辺野古沖の埋め立て承認「撤回」を宣言した上で、来日中のマティス氏に面談を申し込み、工事中止を訴えるのが筋ではなかったか。

 出発前と帰国後の那覇空港の支援者の数が前回と比べて減少し、地元メディアの扱いもそれほど大きくなかった。訪米での活動は、リベラル左派系の支援者やメディア向けの単なるパフォーマンスと揶揄(やゆ)する声もある。

 翁長知事の思いとは裏腹に、沖縄防衛局は6日、辺野古沖の海にブロックを沈め、本格的な埋め立て作業を開始した。(T)