IR法案に反対の沖縄県の翁長雄志知事


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 カジノを含む統合型リゾート(IR)を解禁するIR推進法案は衆参両本会議で可決され、成立した。「IR実施法案」を1年以内に国会に提出し、成立すれば、早くて2022年に施設が開設されることになる。

 沖縄県の翁長雄志知事は、IRに反対している。仲井真弘多前知事は、沖縄県の将来像を描く21世紀ビジョンの中で、カジノを含むIRの導入には前向きな姿勢を示していた。

 仲井真氏は、県民の意識調査、シンガポールやマカオなどの海外視察、有識者を招いてのシンポジウムなどを通じて合意形成を試みていた。大阪、東京、神奈川などと誘致合戦になることが想定されたが、米軍基地を多く抱える沖縄はカジノの「有力候補」ともみられていた。

 ところが、翁長革新県政の誕生と同時に潮目が変わった。翁長氏は知事選の公約で「自然や歴史、伝統文化などソフトパワーにけん引される好調な観光産業に影響を及ぼしかねない」との理由でIRを全面否定した。

 それにもかかわらず翁長氏は知事に就任して約半年後の昨年7月、シンガポールのカジノ施設を視察した。「実際に見た上で自分の判断が正しかったかを考えたい」というのが訪問の動機だというが、視察を終え、「これからも(カジノを)基本的にはやらない」と述べ、県内の経済界からは落胆の声が上がった。

 県商工会連合会は国際会議や多目的イベントが開催できるMICEとIRの経済相乗効果を期待していた。しかし、翁長県政は、IRに反対しているだけでなく、MICE関連施設をリゾート性の低い沖縄本島東海岸地区に建設することを決めた。(T)