竹富町役場の移転で住民投票


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 八重山諸島の石垣島を訪れた時、石垣市役所のすぐ近くに竹富町役場があるのを見つけて不思議に思ったことがある。竹富町では今月28日にも新庁舎の建設場所を問う住民投票が行われる。

 16の島で構成される竹富町には、西表島、竹富島、小浜島、黒島、波照間島、鳩間島、新城島、由布島の八つの有人島に約4000人余が暮らしている。

 現在、庁舎が石垣島(石垣市)にあるのは利便性のため。各島への航路は石垣島が起点になり、各島間を相互連絡する航路がほとんどないからだ。もともとは町名からも察しがつくように、竹富島に役場があったが、1938年に八重山諸島の玄関口である石垣島に移転した。

 半世紀以上の間、「役場は町内に置くべきだ」「石垣島にある方が便利」と論争が続いているが、実は1963年には過半数の町民が暮らす西表島への移転案が町議会で可決されている。それから約40年後の2002年に町が西表島東南部の大原地区の国有地を購入し、敷地造成も完了した。

 現庁舎の老朽化が進んでいることもあり、川満栄長町長は12年の町長選でこの問題に決着をつける意味で住民投票を公約に掲げた。住民投票条例案は9月17日の町議会で議員提案され、全会一致で可決された。

 長い歳月をかけても解決できなかった役場移転問題は、移設計画が決まってから約20年たっても返還の見通しがつかない米軍普天間飛行場(宜野湾市)に似ている。

 住民投票の結果がどう転んでも、全町民が満足することは期待できない。それでも“ベターな選択”をして物事を前に進めるのが行政の仕事だ。(T)