存在感増すイスラム・マネー、シャリア指数の認知度がカギ

6月15日、原油高などを背景にイスラム・マネーが存在感を増している。写真はアラブ首長国連邦・アブダビ証券取引所の株価ボード。昨年7月撮影(2007年 ロイター) [拡大]
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【東京 15日 ロイター】 原油高などを背景にイスラム・マネーが存在感を増している。イスラム・マネーは圏内投資傾向が強いものの、規模の拡大で世界の金融市場への流入額が増加。ファンドなどイスラム金融専門商品の立ち上げ機運が高まる中、イスラム圏独特の投資行動が世界の金融市場に影響を与える可能性もあり、日本の株式市場も例外ではない。イスラム法(シャリア)に準拠した株式指数を算出する動きは既に出ており、同指数の認知度が上ってくるようだと、ミクロ面でみたマネーの動きに変化を与えることも考えられる。
<急増するイスラム・マネー、圏外投資にも期待>
イスラム諸国会議機構(OIC)には57カ国が加盟しており、イスラム人口は13億人ともいわれている。アラブ首長国連邦(UAE)を構成する7首長国のひとつ、ドバイの発展がめざましいのは周知のところだが、中東だけでなく中央アジア、マレーシアやインドネシアなどの東南アジア、モロッコやチュニジアなどの北アフリカと加盟国は広範囲に及ぶ。
圏内には、巨額のイスラム・マネーが存在している。マレーシアに本部があるイスラム金融サービス委員会(Islamic Finanacial Services Board、ISFB)の直近の推計ではイスラム・マネーは1兆ドルに達したもよう。ただ、統計から漏れるマネーの部分が大きく、更に年間伸び率が15%ともいわれており、実際の規模は1兆ドルをはるかに超えている可能性が高い。
イスラム社会は聖典コーランの教えに基づいており、金融も例外ではない。イスラム金融には2つの大きな特徴がある。ひとつは、イスラム法(シャリア)に則った金融取引で金利という概念がない点。利子の受け取りはコーランで禁じられいるためだ。もうひとつは、コーランの教義に反する事業─豚肉、アルコール、武器、賭博(とばく)、アダルト・エンターテインメント─に関わっている相手とは金融取引できないという点だ。
イスラム金融の各取引には、各金融機関などに設置されているイスラム学者委員会(シャリア・ボード)が取引の詳細を調査し、シャリアに適っていることを事前に認定する「シャリア・コンプライアント」作業が必要となる。
別の特徴として、イスラム圏内への投資傾向が強い点が挙げられる。野村証券金融経済研究所アジア調査部のシニア・ストラテジスト、岩田佳也氏は、米国債券への投資などはあったものの、基本的に利子が発生する資産で表立って投資しづらい上、2001年の米国同時テロをきっかけに、米国など圏外資産を回避し圏内投資の意識が強くなっているようだと指摘する。
「たとえばドバイは、金融だけでなくインフラや観光など実物投資先が豊富にある。イスラム圏外への投資ウエートは、どちらかというと低下している」(岩田氏)という。
ただ、ウエートは低下してもイスラム・マネーのパイ自体が拡大しているため、圏外投資の実額は着実に増加している。ニューヨークやロンドン、マレーシアの証券取引所では
イスラム・マーケット・インデックスを算出しており、これを組み込んだイスラム投資ファンドを扱う証券会社もある。主要な格付け機関も、イスラム仕様のインデックスを算出し始め、イスラム専門金融商品への機運が高まってきていることがうかがえる。イスラム圏の投資家が投資しやすい環境が整備されれば、マネー流入が期待できる。
<シャリア銘柄、日本株にも資金流入期待>
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)では、2007年4月、シャリアに準拠した米国、ヨーロッパ、日本の指数の算出を開始した。米S&P500、欧S&P Europe350、日S&P Japan500をベースとし、構成銘柄についてイスラム法学者をボード・メンバーに持つRating Intelligence社が銘柄をスクリーニングしている。いわゆる「シャリア化した指数」の作成だ。
S&Pによると、すでにスイスの銀行や日本の金融機関などから引き合いがあり、夏にかけて米国、ヨーロッパ、日本の指数が中東の投資家に販売される予定だという。
S&P Japan500と同指数をシャリア化したバージョンを比較すると、シャリア化指数では構成銘柄数が291に減る。たとえば、丸大食品<2288>や日本ハム<2282>などの豚肉関連、アサヒビール<2502>や宝ホールディングス<2531>などのアルコール関連、新日本石油<5001>など石油関連のほか、オリエンタルランド<4661>などの娯楽関連や日本たばこ産業<2914>、商社、銀行、証券会社、リース、機械・輸送用機器など、シャリアに準拠しないと判断された業種が除かれている。
巨額のイスラム・マネーが、一気に日本の株式市場に押し寄せる可能性は低く、シャリア化インデックスが足元で市場を混乱させることはない。ただ、野村証券の岩田氏によると、イスラム圏の投資家が資金を委託することが多いロンドンの運用会社の日本株への投資が最近増えており、米国の投資会社からの流入よりも多い。岩田氏は「イスラム・マネーの日本株流入の可能性を示唆しているのではないか」とみる。
2007/06/15 13:13