ブルカ着用禁止法案、仏首相発言で賛否両論
【パリ安倍雅信】フランスのサルコジ大統領が昨年、イスラム教女性が全身を覆うブルカは「女性の隷属を象徴するもの」と発言したのを受け国民議会(下院)に設置された特別調査委員会は1月26日、ブルカ着用は「フランスの価値観とは相反する」との認識を示し、公共の場での着用禁止を提言する報告書をまとめた。
これを受け、フィヨン首相率いる仏政府は、法制化に向け法案作成に取りかかっており、議会での論戦が今後、始まることになる。報告書は、イスラム教を標的とした差別との批判に配慮し、価値観の問題と共に、役所などで顔が確認できないなど、現実的な問題も指摘している。
同問題を検討してきた下院専門委員会は、サルコジ大統領の発言と、世論の後押しで設置された臨時特別委員会で、議員32人で構成され、半年をかけて有識者ら約190人から意見聴取して報告書をまとめた。ただ、同委員会のアンドレ・ジェラン委員長が共産党ということからも分かるように宗教そのものへの排除的姿勢が政府に見え隠れしている。
フランスでのいくつかの世論調査では、イスラム女性が全身を覆うブルカやニカブと呼ばれる衣装には「違和感や不快感を覚える」「公共の場での着用は禁止すべき」との認識が6割に上っている。フィヨン首相は2月に入り、「ブルカはフランスの文化にそぐわない」との発言を行い、法制化を急ぐ方針を表明した。
フランスには、大革命以来の政教分離の歴史があり、1905年に教会と国家の分離に関する法律が成立した。それは現在の教会の政治上の権力行使の排除、公の場からの宗教色を排除するライシテ(非宗教原則あるいは宗教からの独立)へとつながり、その思想が現在も憲法の中で存続している。
2004年に制定されたイスラム女性のスカーフ着用を公立学校内などで禁じる法律も、この非宗教原則が根拠となっている。だが、ミッテラン政権が北アフリカのアラブ系移民受け入れを積極的に行って以来、増え続けた移民たちが持ち込んだイスラム文化は、フランス社会を根底から揺さぶり、極右が台頭、ブルカ排除もその延長線上にあると言える。
在仏イスラム教指導者の中には、「このような方法での同化政策は、うまくいかない」などの批判も出始めている。ブルカ着用の女性の中からは「ブルカは神に対する信仰の姿勢を示すもので、男性への隷属とは関係ない」との意見も出ている。フランスには現在、ブルカ着用者が1000人前後いると見られている。
一方、ブルカ着用禁止派の中には、イスラム系移民家庭内のDVが、過去においては隠蔽されてきたが、この10数年、司法への訴えが増えている事実を指摘する声もある。9・11米国同時多発テロ以降、アラブ人及びイスラム教徒に対する目が厳しさを増す中、公共の場から宗教色を完全排除する動きは、欧州全体にも影響を与えそうだ。
2010/2/6 22:12
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