円高が急速に進行、ドル/円は昨年安値108.97円を意識

8月17日、外為市場では、米サブプライムモーゲージ問題をきっかけに急速な円高が進んでおり、ドル/円は110円割れが視野に入った。写真は2003年10月、都内で撮影したディーラー(2007年 ロイター) [拡大]
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【東京 17日 ロイター】 外為市場では、米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題をきっかけに急速な円高が進んでおり、ドル/円は110円割れが視野に入った。市場参加者の予想を超えるスピードで円高が進行しているため、2006年5月の安値108.97円を下値メドととらえる見方も出ている。
市場では、ポジション整理のあまりの激しさに水準感が通用しない相場になっている、との声も出ている。
<ヘッジファンドが円キャリー取引を解消、ポジション縮小でも円高止まらず>
最近の急速な円高進行の「主犯格」とされているのは、海外のヘッジファンドだ。これまでヘッジファンドは低金利の円を調達し、高金利通貨建て資産で運用して金利差収入を狙う円キャリートレードを活発化させてきたが、米サブプライム問題の広がりで運用先である株価が世界的に大きく下落、キャリートレードを縮小する動きが相次いでいる。キャリートレードは金利差収入を狙う取引手法だけに「相場変動が大きくなると金利差収入を得るのが難しくなる」(都銀の外為関係者)といい、相場の変動そのものがキャリートレードの縮小を促がしている側面もある。
実際、ファンド勢の円売りポジションは急速に縮小している。投機筋のポジション動向の参考値として知られるIMM通貨先物の取り組み状況によると、差し引きの円売りポジションは6月26日まで週に過去最高の18万枚を記録した後、8月7日の週までに3万枚とおよそ6分の1まで急速に減少。この期間中にドルは124円台から117円台まで7円の円高が進んだ。それからわずか1週間半でさらに5円の円高が進んでおり、海外ファンドの円売りポジションは「かなりはけてきた」(外銀の外為営業担当者)状況だ。
しかし市場では、ドルが1年2カ月ぶりの112円台へ下落しても円高が終息するとの見方は少ない。サブプライムはファンド勢にとって、一部企業の損失計上に伴う株価下落という問題にとどまらず「為替の大幅変動による損失も加わり、ポジションを閉じる動きが本格化している。きっかけはサブプライムだったが、現在(金融市場で)起こっている問題は、すでにその域を超えている」(香港上海銀行・外国為替営業部長の花生浩介氏)ためだ。
サブプライム問題の広がりは決済リスクの高まりにつながり、企業や投資家、ファンドなどの間でも手元流動性を厚くする動きが強まっているとされる。現金化需要の高まりがポジションの縮小につながり、円キャリートレード縮小の一因となっている。
今週前半にかけて市場では、9月の新四半期入り時に多数の解約に対応するためヘッジファンドがポジションを縮小するため「15日にあらゆる相場が暴落する」(市場筋)とのうわさが流れた。15日は大きな相場変動には至らなかったが、米サブプライム問題が欧州やオセアニアなどにも飛び火し「全体像が把握できない怖さ」(別の都銀外為ディーラー)がくすぶる中、疑心暗鬼になった参加者がリスク回避に向けてさらに円買いを進める可能性は否定できない。
三井住友銀行・市場営業統括部チーフエコノミストの山下えつ子氏は「株価の下落が続く限り、リスク回避の動きも続く。ドルは110円を割り込んで円高が進む可能性がある」と指摘。市場では、2006年5月の安値108.97円が当面の下値めどとする声が複数出ている。
<商品・中国株下落なら一段の円買いか、不安解消には政策発動など「あく抜け感」必要に>
今後の円買い戻し動向を見極めるポイントとして、市場関係者の間では、商品相場や中国株の動向に関心を示す声が出ている。円キャリートレードの縮小とともに、金融市場ではこれまで運用対象とされてきた米株式や高金利・新興国通貨の下落が目立ち、キャリー通貨として人気の高い豪ドルやNZドルは11カ月ぶり円高水準へ下落するなど、調整色を強めている。しかし、商品市場では原油先物が70ドル台と高値から1割程度の調整にとどまり、中国の上海総合株指数<.SSEC>は15日の取引で最高値を更新。16日こそ下落したものの、17日も前日比ほぼ変わらずの水準で取引されている。「世界中の金融資産でアンワインド(巻き戻し)が強まっているのに、リスクマネーが最も集まりやすかった商品と中国株はまだ調整が浅い。リスクアセットのラストリゾートになっている市場が本格調整に転じたら、もう一段の円買い戻しが強まるかもしれない」(さらに別の都銀関係者)という。
サブプライム問題に疑心暗鬼となる市場では同時に、問題の終えんには各国当局の政策発動などの「あく抜け感」が必要との声が増えている。一部では米連邦準備理事会(FRB)の緊急利下げ観測も浮上。HSBCの花生氏も「サブプライム問題をきっかけに投資家の動きが世界的にシュリンクし、資金を引き揚げにかかっている。広い意味でのクレジットクランチ(信用危機)に近い状況だ。各国当局がどのような対応を取るかが最大のポイント」としている。
(ロイター日本語ニュース 基太村 真司)
2007/08/17 19:59