世界的な長期金利上昇、資金巻き戻し懸念で注目されるCDS
【東京 8日 ロイター】 米国債市場の急落で、世界的な長期金利上昇の可能性がにわかに現実味を帯びてきた。10年米国債利回りが5%台に乗せ、米株市場には利益確定の売りが集中。金融緩和下の過剰流動性の反転リスクへの警戒感が急速に台頭している。
こうした中、ヘッジファンドなどを経由して投機的な資金が流入していたクレジットデリバティブ市場でも、資金巻き戻しへの懸念が出始めており、無風状態の多かったクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引市場の波乱を予想する声もささやかれている。
<米金利は心理的節目の5%超す>
金利先高観が相場を支配したのは米景気指標が軒並み改善したのを受け、米国の早期利下げ観測が後退したのが主な理由だ。世界的な金融引き締め観測を背景に、10年米国債利回りは節目の5%を突破。一方、投機筋などの利益確定の売り物に押された株価は大幅な下げを演じた。
世界的な金融引き締め観測を受けた金利上昇について、メリルリンチ日本証券・チーフ債券ストラテジストの熊谷亮丸氏は「米国の利下げ期待がはく落し、むしろインフレ懸念が強まっていることで、過剰流動性の巻き戻しが始まったようだ」と話す。
折りしも外部環境が金利上昇をサポートする局面に突入した円債市場は、朝方発表された4月機械受注統計で設備投資の先行指標となる船舶・電力を除く民需受注額が市場予想を下回り、追い風となる内容だったものの、米長期金利を嫌気した売り物に押される展開。円金利は昨年8月以来10カ月ぶりに1.9%台に上昇した。
こうした中、クレジットデリバティブ市場でリスク許容度が増しているのを懸念する声も出始めた。「不動産価格や大型M&Aに対する資金流入に比べれば、クレジット市場で揺り戻しが起きても大した問題はない」(外資系証券)と楽観する声は多い。
海外では、CDS市場でヘッジファンドの存在感が高まっている。半面、過剰流動性が巻き戻され、リスク許容度が低下すると資金の引き揚げにもつながりかねない。
格付け会社、フィッチは「ヘッジファンドの台頭はCDS市場に大きな流動性を供給すると同時に、一斉のアンワインドによる予想外の損失をもたらすリスクも内包している」と分析する。
<クレジット市場でも存在感増すヘッジファンド>
フィッチが5日発表した調査によると、約30兆ドルに上るCDS市場におけるヘッジファンドの売買シェアは、2005年に30%以下だったのに対し、2006年末には約60%に拡大している。BNPパリバ証券・クレジットアナリストの野川久芳氏は「世界的な過剰流動性からヘッジファンドへの運用委託が増えており、ファンド資金がCDS市場に流れ込んでタイトな価格を形成している可能性がある」とみる。
ドイツ証券・クレジットアナリストの村田昭仁氏も「ヘッジファンドの運用の場になっていることが、スプレッド縮小を促す要因につながっている」と指摘する。
日本のCDS市場の指標となる「iTraxxJapan(アイ・トラックス・ジャパン)」は15―17bpと、依然として算出以来の過去最低に迫る水準。日本におけるヘッジファンドの資金流入は限定的とはいえ、低水準で推移しているのは日本企業の信用リスク低下が鮮明なためとされているが、参加者の心理的な抵抗は小さくない。
「16bpを下回ると過熱感から様子見気分が広がる」(外資系証券ディーラー)。回収率35%という条件付きでは指標の推定下限値は12.8bpだが、回収率を低くすれば先月中旬に成立した15bp台の取引水準はすでに下限に到達している、というのがBNPパリバ証券の見立てだ。
巧みな金融商品の開発によりリスクが分散されており、市場には「リスクの所在が不明確なのは危ぐすべきことだが、ネガティブインパクトは吸収できるのではないか」(ドイツ証券の村田氏)とみられる。
半面、投機筋の海外市場での動きが日本市場に波及し、低位安定していたスプレッドが上昇に転じる懸念は残る。「リスク軽視で投資してきた投機筋のアンワインドなどの外部要因がクレジット市場の中で重なれば、欧米発の相場のかく乱が生じる可能性がある」(国内証券)との見方もあり、これまで無風に近かったCDS市場に波乱の目も出てきたとの懸念も浮上している。
2007/06/08 20:14