長短金利に上昇圧力、円キャリー取引や利上げ観測響く

5月31日、円キャリー取引や利上げ観測が響き長短金利への上昇圧力が持続。写真は都内で先月撮影した株価のボード(2007年 ロイター) [拡大]
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【東京 31日 ロイター】 長短金利の上昇が止まらない。内外の株価が上昇基調を維持しており、円キャリー取引による短期の円資金需要が衰えを見せないほか、日銀による利上げ観測の高まりで円債市場でも売り優勢の地合いが続いている。
日銀は金融政策の運営にあたって資産価格や為替市場も注視していく姿勢をみせており、金融市場では、参議院選挙前の7月の利上げ前倒し観測が浮上している。
<海外勢が対内株式を買い越し、円資金需要が拡大>
財務省が31日に発表した5月20日─26日対外・対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、海外勢は対内債券(中長期債)を641億円買い越した。買い越しは6週連続。日米金利の格差拡大に伴う裁定売りや日銀の早期利上げ懸念などで前週から軟調な相場が続いていただけに、海外勢の買い越しに意外感を感じた市場参加者は少なくなかった。
市場では、金利上昇懸念によるスワップ・スプレッド拡大で国債買い/スワップ払いのアセットスワップ取引が出ていたことに加えて「キャピタルゲインを重視する海外ファンド勢による売りが出ていたが、2005年ごろから目立ち始めているキャリー収益狙いのリアルマネー系の買いが入った結果、少額ながら買い越しになった」(みずほ証券・マーケットアナリストの青山昌氏)という。
一方、対内株式について海外勢は2613億円買い越した。買い越しは4週連続。
短資協会によると、無担保コール残高は28日に14兆4033億円と今月の準備預金積み期でもっとも高い水準となった。世界連鎖株安が起きた2月下旬の16兆円台に比べれば低いものの「為替の変動が小さいことを勘案すれば、海外勢が外銀を通じて円資金を調達し円株取引に流れていたケースもあると推察される」(国内金融機関)という。
<日経平均1万8000円を射程、上海株急落に抵抗力>
中国財政省が株式取引の印紙税率を現行の0.1%から0.3%に引き上げたのをきっかけに30日の上海株が急落し、金融市場に緊張が走った。しかし、中国発の世界連鎖株安の再発懸念は杞憂にすぎなかった。米連邦準備理事会(FRB)が30日公表した5月9日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で、委員会メンバーから、米景気が急減速するリスクは低下したとの見方が示されていたことが明らかになると、米株市場は急上昇。S&P総合500指数は12.12ポイント(0.80%)高の1530.23と2000年3月の最高値(1527.46)を更新。
31日の東京株式市場でも日経平均が前日比287円49銭高の1万7875円75銭と高値引けとなり、2月末の世界連鎖株安直前に付けた1万8000円を射程に入れた。「日米株価の最大のリスクは、流動性相場の象徴でもある中国株の動向」(国内金融機関)だったが、上海株急落に日米株価が強い抵抗力を示していることで、先高期待が強まっている。
日興コーディアル証券・国際市場分析部長の馬渕治好氏は「決算発表中の様子見期間が終了し、内容の良い銘柄が物色されている。決算発表に伴う不透明感がなくなったことで資金が流入しやすくなっている面もあるようだ」と指摘。その上で「今後も中国株の波乱に巻き込まれることはあるだろうが、1万7800円どころのフシを上抜いたことで、6月中は株高が継続する」とみており、日経平均がいったん1万8000円台に乗せる展開を予想。
ロイターが日本の機関投資家に今後の投資方針を調査した「国際分散投資戦略5月調査」では、株式への配分比率が54.3%と06年12月(54.6%)以来の高い水準となり、株式投資に対する投資家の強気姿勢が明らかになっている。
<くすぶる7月利上げ前倒し観測、長短金利が上昇>
堅調な株価にあわせて長短金利の上昇が止まらない。円債市場では、2年利付国債利回りが0.980%と約9年11カ月ぶりの水準に上昇。10年最長期国債利回り(長期金利)も4カ月ぶりに付けた29日の1.755%に並ぶ場面もあった。市場では「参院選後にあたる8月ごろの利上げリスクをほぼ織り込んだ」(UBS証券チーフストラテジストの道家映二氏)との声もある。
にもかかわらず、債券売りが収まらないのは「参院選前の7月利上げの可能性を織り込みにいく段階にある」(バークレイズ・キャピタル証券チーフ円債ストラテジストの小林益久氏)ことが大きく影響している。
6月中旬以降に相次いで予定されている日銀総裁・副総裁などの講演で、日銀による市場への情報発信が活発になることが予想されている。また、6月には欧州中央銀行(ECB)、スイス国立銀行、スウェーデン中央銀行などが利上げに踏み切る可能性があり、世界的な金融引き締めとの思惑が上値を重くしている。
福井俊彦日銀総裁は朝日新聞が26日に掲載したインタビューで、緩やかに金利調整していく姿勢を示した上で「資産価格や為替市場を通じ、国際市場への影響もみながら金融政策を行っていく」と発言。西村清彦日銀審議委員も31日に函館市で行われた講演で、国内の投資や資産価格の動きについて過度に積極的なリスク許容の動きが発生する可能性には常に注意しなければならないと述べた。
大和総研・債券ストラテジストの奥原健夫氏は「上海株の下落にもかかわらず、日米株価の調整が行われなかったことで円キャリートレードの安定感が高まっている。これに対して、日銀は金利調整が遅れれば、相場の振幅が大きくなるとして、再三にわたり警鐘を鳴らしている」と指摘。「西村委員の発言も、政策委員メンバーの中でハト派に近い中間的立場に位置していることを考えれば、重みのある内容」とし、利上げ警戒感が継続して長期金利は1.8%台まで上昇余地があるとの見方をしている。
2007/05/31 20:28