中国マネーに変化の兆し、株式に追い風も日本に恩恵及ばず

5月25日、米国債投資に偏重していた巨額な中国マネーの流れに変化の兆しが出ている。写真手前は24日、北京の紫禁城(2007年 ロイター) [拡大]
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【東京 25日 ロイター】 米国債投資に偏重していた巨額な中国マネーの流れに変化の兆しが出ている。中国では、外貨準備運用の一環として米国の投資会社への出資が決まる一方で、民間銀行の海外株式投資が解禁された。この先、米国債券を中心とする従来の低リスク資産からよりハイリスクな資産へのシフトが進むようなら、世界の株式市場にとっては追い風になるとの声が早くも聞かれる。ただ、日本の株式市場への活発な流入は考えにくいとみられている。
<3つの政策変更>
中国は貿易黒字などを通じて、巨額の外貨準備を蓄積してきており、その額は2007年3月末で1兆2000億ドルを超えた。中国は2005年7月に人民元を切り上げたが、その後、人民元の上昇は限定的となっており貿易黒字は膨らみ続けている。中国の主要な貿易相手国である米国は、貿易摩擦で不満を募らせてきていた。
5月20日─22日にワシントンで開かれた第2回米中戦略経済対話を前に、中国人民銀行(中央銀行)は米国からの圧力を事前にかわすように、為替、金利、預金準備率の3つの政策の同時変更を発表した。
為替については、5月22日から対ドル人民元レートの1日の変動幅を基準値プラス・マイナス0.3%から同0.5%に拡大した。
また、5月19日から貸出金利を0.18%、預金金利を0.27%引き上げた一方、6月5日から預金準備率を11.0%から11.5%に引き上げる。いずれも現在の過剰流動性の是正を目指すものだが、その効果についてはいまだ不透明だ。
第2回米中戦略経済対話自体も、為替改革の面で進展がないまま終了した。米下院歳入委員会は23日、第2回米中戦略経済対話終了後に連邦議会を訪れた中国の呉儀副首相(通商担当)に対し、中国は輸出を増やすため、自国通貨を操作することによって国際的な通商ルールを無視しているとの見解を伝えている。
みずほ総研アジア調査部中国室のシニアエコノミスト、鈴木貴元氏は、今回の政策変更について、利上げペースの加速で、中小企業や家計への配慮が減り、銀行収益の90%を占める貸出利ざやを犠牲にしても引き締めを行う覚悟が示されたと一定の評価をしている。半面、実質預金金利は依然としてゼロ近辺で強い引き締め効果は期待しにくいとの見方だ。「今回の金融政策は景気過熱とバブル対策に一歩踏み込んだものだったが、一時的なアナウンスメント効果で終わる可能性が高い」(鈴木氏)という。
5月25日午前の人民元の基準値は1米ドル=7.6523元となり、切り上げ後の最高値を更新した。しかし「基準値」に対する変動幅は小さく、0.5%にまで幅を拡大した効果はみられない。
<資産多様化に動き出す>
金利政策の変更でも大きな効果が期待できない中、中国は米国などからの不満の矛先をかわすように、別の手法を打ち出した。米有力投資会社ブラックストーン・グループ[BG.UL]に対する30億ドルの出資だ。出資の発表を受けて、市場では中国が次に出資する米企業に関して憶測が飛び交うなど、中国マネーのハイリスク資産への投資先に急速に注目が集まっている。
RANDのアジア太平洋政策センターのディレクター、ウィリアム・オーバーホルト氏は「中国は、優良ブランドの獲得を望んでいる」としている。同氏は、中国のコンピューター会社レノボ・グループ(連想集団)が米IBMのパソコン事業を12億5000万ドルで取得した2005年の事例を指摘。「IBMの事例は中国が好む代表的な存在」と述べている。
別の一手は、中国の銀行に対する海外株式投資の解禁だ。中国の銀行監督当局は5月11日、適格国内機関投資家(QDII)制度の下で初めて、商業銀行に顧客資金の海外株式投資を認可すると発表した。
商業銀行はこれまで、顧客資金の海外投資先を固定利付き商品に限定されていた。そのためなかなか関心が盛り上がらず、中国の国際収支黒字削減の方策としてのQDIIの活用が進んでいなかった。これを受けて、結果的に預金を通じて個人マネーが多様な投資先に向かうことも可能となる。
<規模のインパクト>
第一生命経済研究所の主席エコノミスト、嶌峰義清氏は、中国マネーについて規模のインパクトを指摘する。今回のブラックストーン・グループへの出資のような事例が継続すれば、多額の中国マネーが米国債券からハイリスク資産にシフトし、米金利押し下げ圧力の緩和につながるとのシナリオが描けるという。中国マネーがリスク資産に一段と目を向ければ株式にとって追い風となる。
ただ、嶌峰氏は「米国経済がこのまま堅調に推移すれば、結局、中国の対米貿易黒字は増え続けて、新たな中国マネーが米債券市場に流入することになり、低リスク資産とハイリスク資産間でのアロケーション比率に大きな変化はないのかもしれない」と述べている。
一方、株式市場に中国マネーが入る局面でも、日本株にすぐその恩恵があるとは考えづらい。「海外投資家にとって、日本株には出遅れ感あるが、レンジ内でのもみあいに終始しモメンタムに乏しい。中国マネーにとっても、投資先として最優先させる資産にはならないだろう」(国内投信ファンドマネジャー)と、冷ややかな声が出ている。
2007/05/25 15:45