| オピニオン | |||
|
甘えなき同盟関係を 健全な国防意識・愛国心が前提 外交安全保障フォーラム主任研究員 柚留木廣文
実際に戦後、半世紀以上も日本は外寇(がいこう)を招くことなく平和と繁栄を享受し、国家として大きなリスクやコストも払わずに済んだ。それらは日米安保条約の抑止効果が有効に機能してきたからであって、その余慶にあずかっている国民からすれば日米安保にあえて反対する理由はないし、右のような調査結果が出るのもむべなるかなである。
しかし、この高い支持率を裏返せば、そこには国民の多くが日本の有事には米軍が来援し、必ず守ってくれると思っていることが見て取れるのである。一方では米軍の削減・撤退を要求しながらも、日本が独力で対処できない、つまり自衛隊では手に負えない事態が発生した時は、最終的に自国の安全を米軍にたのむという対米依存の甘えた考えが国民の心底にあることを否定できない。
その甘えが同盟という国家間の政治、すなわち国際政治のリアリズムの中でのパワー・ポリティクスの本質にかかわる外交行動において露呈することになる。日本政府は憲法上の制約から集団的自衛権を行使することができないとしていることから、安保条約において日米両国の軍事的役割分担は非対称となっている。
米軍には日本の防衛義務を求めておきながら、日本は自国の安全に直接関係ない紛争において米国防衛の義務はないのである。そこで日本はこの片務性を「基地とカネ」の提供で補い相殺することにした。
在日米軍に対する財務的支援は年間五十億ドル以上となり、米軍駐留経費の約七五%にもなっている。なかでも特別協定によって負担される経費を日本では「思いやり予算」などと呼んでいるが、米軍側はこれらの財政支援を一律にホスト・ネーション・サポート(接受国支援)として受け取っている。確かにこの意味では、米軍の前方展開と作戦遂行に日本は大きな貢献をしていることになる。
湾岸戦争当時、日本の百三十億ドルもの巨額の支援が国際社会から正当に評価も感謝もされなかったことを忘れてはならない。古来、平和を金で買い取るような国は尊敬されず、国家間の信頼や真の友好関係を獲得することができずに、破滅への道をたどるのが歴史の定説であることをわれわれは知っておくべきであろう。
日米安保条約を維持し、日米同盟をさらに強固にしていくために日本は、相互主義でバランスのとれた軍事的役割を果たすべきである。それには集団的自衛権の行使を不可能とする政府の解釈を改めねばならないし、また何よりも先ず、自分の国は自分で守るという国民の健全な国防意識と愛国心を涵養していく必要がある。これは軍国主義でも何でもない。それすらもなく、いざとなったら米国に援助を求め、米軍に守ってもらおうなどというのは同盟国としての信義にもとるのみならず、日本は外侮(がいぶ)をこうむることになろう。
一国の安全保障の第一の前提は、国民自らの堅固な国防意識と愛国心が存在することであり、自国の軍隊による防衛に基盤を置くものである。その上に、他国軍との協力によって完全なるを期するのが同盟の目的であって、それでこそ対等のパートナーとしての協力関係が成立する。自分のことは棚に上げ、米国に従属的だとか、「ビンの蓋」(日本封じ込め)などの被害者意識を持つのは、しょせんは対米依存の甘えた構造から脱しきれない日本国民の愚痴にすぎないのだ。
日米安保条約の改定からすでに四十年。日米同盟が真の意味での成熟した国家の関係となるには、日本はまだ幾度の試練を乗り越えねばならない。
| ||