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ペルー大統領選への”干渉”

軍事評論家 土田 隆

 五月三十日付の産経に掲載された[ワシントン29日時事AFP]によると、ホワイトハウスのスポークスマンは、前日、前々日に行われたペルーの大統領選・決選投票の正当性について、「米政府は現在、情報を集め、議論しているところで、判断をくだす段階ではない」と述べたという。

 ところが、同日付朝日夕刊には、「フジモリ政権/米、正当性認めず」という見出しの記事が載っていて、それによると米国務省の当局者は、同日、「フジモリ氏の当選は、民主主義に対する『重大な脅威』」であって、正当性を認めぬ姿勢を明らかにしたとある。

 わが国でいえば、内閣官房と外務省がそれぞれ異なった見解を発表したようなもので、それだけで、野党やマスコミが騒ぎかねない齟齬(そご)と評すべきだが、いやしくも一国の選挙事務局が「決選投票は成立」と認めた投票結果を疑い、その正当性を否定するのは、いかに南北アメリカ三十五カ国が加盟する米州機構(OAS)の“盟主”的大国とはいえ、いささか内政干渉が過ぎる、のではないか。

 顧みれば、九〇年の大統領就任以来、フジモリ氏は、超インフレを制圧し、ペルーを無法地帯化させていたテロ集団を壊滅状態に追い込み、さらにコカインの生産を半減させるなど、学者出身とは思えぬ剛腕でペルーを蘇らせた。

 ペルーの有識者の一人は、「フジモリ政治は力による安全をつくろうとする。昔はテロがあり、力で押さえる政治が必要だった。もう、そういう問題はない」(朝日5・30)とおっしゃっているようだが、しかし、坂の途中でブレーキを離すとクルマは、また逆戻りする。フジモリ氏は、ペルーはまだ、坂の途中を、息せき切って登っている最中と見ておられるのだろう。

 もとより権力は、故・朴大統領がそうだったように、己は荷担しなくても、甘い汁にありつこうと寄ってくる輩によっても腐敗する。が、フジモリ氏は、そんな手合いの暗躍を防ぐために、「国民擁護官」なる職も設けておいでになる。

 何度も申し上げていることだけれども、世界いずれの国も、アメリカが考えているような民主主義国に向かって、足並みそろえて進んでいるわけではない。文字通り二十一世紀に入ろうとしている国もあれば、社会構造が十九世紀にとどまっている国もあるのである。

 それに、国情の違いもある。アメリカでは、今や、選挙資金の多寡で州知事や大統領がきまるようだが、そんな国に、他国の大統領選の正当性を云々する資格があるのか。

 (土田 隆)