ロシア・モスクワ在住
大川佳宏
楽しい「別荘」の手入れ
いつも曇り空で薄暗い日々が続くモスクワの冬は、五月を迎えるころに突然、終わりを告げる。代わってやってくるのは、陽光まぶしく、夜遅くまで日が沈まない季節。気温もぐんぐん上がり、あっという間に街は緑に包まれる。
この時期のロシア人たちは忙しい。もうすぐやってくる貴重な夏を快適に過ごすには、冬の間にあちこち傷んだダーチャ(別荘)の手入れが不可欠だ。
私の友人は持病が悪化し、退院したのは五月の終わり。一緒にダーチャに行った私が見たのは、胸の高さまで伸びた草むらに沈みつつあるダーチャ。「早く来ないと、こうなるんだよ」友人は肩を落とす。
草をかき分けて倉庫に向かい、草刈り機を取り出す。刈るのは楽だが、刈り取った草を運ぶのが一苦労。ふと見ると、トイレの小屋が傾いているではないか。草のせいでぬかるみが消えず、土台が緩んだためらしい。
友人と力をあわせ、バールでトイレ小屋を持ち上げる。土台にレンガをはさんで応急手当て。それからやっと、家の掃除。一通り終わるころには、午後八時を回っていた。人を雇える金持ちなら別だが、一般のロシア人には、ダーチャを維持するのは楽なことではない。
でも、仕事の後にほおばるバーベキューは最高だ。彼の奥さんの手作りケーキを食べながら、草刈りや修理の手間も、ダーチャの楽しみの一部なのだと感じる。
(サンデー掲載:6月26日)