ロシア・モスクワ在住
中村 晃
モスクワの将来と不安
いつも行き来するモスクワのメトロ(地下鉄)周辺が大きく変貌した。
一九九〇年代には、景観を配慮することなく、駅前広場に無造作にプレハブ式の売店群が設置された。ところが、見苦しかった売店は、最近になって花壇や緑にとって代わられていた。
これは五月九日の対独戦勝六十周年記念行事に向けての一環であった。モスクワでの『勝利の日』の式典に五十カ国以上の首脳が参加するとあって、市は新しいイメージづくりに専念した。その最大の目的はテロ防止にある。それは以前発生した地下鉄テロの再発防止の思いから来るのだろう。そして、モスクワ市の次の目標は二〇一二年のオリンピックの誘致、ならびに国際的メトロポリスとしてのアピールである。
しかし、将来への不安がないわけではない。ロシア経済のほぼ80%の外資が首都に集中し、物価や地価は年々3%ずつ確実に上昇しており、貧富の差は広がるばかりだ。
さらに、ロシアは近年の少子化で人口減少の深刻な悩みを抱え、ここ二年間でおよそ百七十万人減少したという。将来、外国人労働者に移民を奨励するようになれば、治安の悪化や首都への人口流入も予想される。既にモスクワの人口は千五百万人に上り、地方の過疎化が一段と進むなかで、モスクワの持つ絶対的影響力はより大きくなっていくように思う。
(サンデー掲載:5月15日)