ロシア・モスクワ在住
宮川貴之
観測史上最高の暖かさ
最近、モスクワっ子に「今年は暖かい冬ですね」と声をかけると、「温かい?いや、暑いよ!」という答えすら返ってくる。モスクワ市の気象担当官の話では、一八七九年に気象観測が始まって以来、一月一日から十日までの平均気温は今年が最高(氷点下0・5度)だという。
最高気温が零度を超えるのは例年は三月二十七日。が、今年は一月九日に最高気温が五・二度まで上がり、これまでの一月一日から十日の最高気温であった二・九度(一九七六年に観測)を更新した。
この暖かさで、公園のベンチに腰掛けてビールやウオツカを飲み交わし談笑するグループが出てきた。そして新年早々、冬物衣料のバーゲンセールが始まり、三割ほど安くなっている。さらには動物園の熊が二カ月も早く冬眠から覚めてしまったり、二〇一二年オリンピック誘致のための氷の像が解けてしまったり、とハプニング続出である。
友人たちは、この暖かさを歓迎している様子ではなく、むしろ拍子抜けといった感が強い。空気が汚くなるとか、体の調子が悪くなるなど理由のはっきりしないことを並べる。確かにモスクワの冬の厳しい寒さのおかげで一九四三年のドイツとの戦いや一八一二年のナポレオン軍との戦いに、劣勢をはね返す大逆転劇で勝利をおさめている。
やはりモスクワには凍えるようなシャキッとした寒さが似合うような気がする。