世界の街角便り
世界の街角便り
ワシントン
ニュージャージー
モンテビデオ
ブエノスアイレス
マットグロッソドスル
カイロ
テルアビブ
バンコク
ウランバートル
ソウル
京畿道九里市
ベルリン/ノイス
ヨハネスブルク
クアラルンプール
マニラ
香港
ニューヨーク
モスクワ
BACKを見る

ロシア・モスクワ在住
宮川貴之

心温まる自家製ジャム

 ロシア人の友人からよく頂くおみやげが自家製ジャムである。ほとんどの家庭では夏の間ダーチャ(別荘)の畑で育てた果物や摘んできた野生のベリーで、ジャムを作る。りんご、ブルーベリー、さくらんぼ、いちご…など種類が豊富である。飾りけのないビンに詰められたどっしりと重いジャム、これがどうしてなかなかの逸品なのである。

 あまりにもおいしい素朴な味が忘れられず、同じようなものを求めていくつものスーパーや市場で買ったが、どれももらったジャムとは程遠い。友人がこう教えてくれた。「ジャムは買うものではありません。作るものです」。聞けば丸三日間、断続的に煮つづけるのだという。ロシア語でジャムはバレーニエと言い、バリット(煮込む)の派生語である。

 その友人宅で暖かい紅茶とブルーベリーのジャムが振る舞われた。「ジャムはパンにつけるんですか?」と私が尋ねると、彼は「ジャムはパンにぬるものではなく、食べるものです」と説明してくれた。

 紅茶をすすり、そしてジャムを口に含む。甘酸っぱいおいしさが体と心を癒してくれる。澄んだ空気や美しい大平原が生み出した豊富な果実が、ロシア人の手によって丹念に煮詰められ、それがバレーニエと実感できるひと時だ。

 これから数カ月続く寒い冬を、ロシア人はバレーニエと共に暖かく越えていくのだろう。


この記事を友達に教える

モスクワHOME

(C)Sekai Nippo Co.Ltd(1975-) Tokyo,Japan.
voice@worldtimes.co.jp