ロシア・モスクワ在住
宮川貴之
期待していた「機内食」
例年になく温暖な十一月のロシア、気温が零下になることもなく、雪もほとんど降らない“五十年ぶりの異常気象”(ロシア人の知人談)だそうだ。そういう平穏な生活の中でもエピソードに事欠かないのが、ロシア生活の特徴だ。
先日、地方都市からモスクワへ飛行機で戻る時のこと。夜八時のフライトを予約した。七時を過ぎると無性にお腹が空いたが、機内食に備えることにした。地上係員の手際の悪さにいらだったが、それも我慢した。
離陸後三十分ほどして水平飛行になり、今か今かと食事を待った。しかし前のカーテンは閉じられたままでなかなかカートを引いた乗務員は現れない。私は生活習慣から、もはや食べ物を欲する“パブロフの犬”状態となっていた。
その後待つこと三十分余り、ようやく食事が振る舞われた。内心、「ロシアは刺激的だなあ」とつぶやいた。
パンとフルーツを食べ、スモークサーモンと暖かいメーンディッシュを後の楽しみに残した。サーモンを一気にほお張る、しかしあまりの塩分の強さに顔がゆがんだ。気を取り直して最後の料理に、期待に胸を膨らませ、ふたを開けた。ああ! 心の中で大きく叫んだ。何と雑穀の炊き込みご飯(ロシア語で「カーシャ」)だった。お人よしの悪気のない冗談にだまされたように、ただただ笑った。自宅に帰り、ご飯とみそ汁で口直しをした。