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フィリピン・マニラ在住
梅垣知博

正直なタクシー運転手

 米ニューヨークでフィリピン人のタクシー運転手が、車内に置き忘れられた七万ドル(約七百七十万円)相当の黒真珠を発見し、正直に届け出たことで米比両国で有名人となった。アロヨ大統領は「われわれが誇り思える行為をしてくれて感謝します」と賛辞を贈り、表彰した。

 私のフィリピンで以前同じ事があった。マニラの有名なお土産店で母親のプレゼントにと琥珀ネックレスを買った。店を出てタクシーを拾うと中華料理屋に向かった。料理を注文しようとしたところ、買ったばかりのネックレスを車内に置き忘れたことに気が付いた。

 楽しいはずの食事がおいしさも感じない状態だった。あきらめかけていたところ、タクシーの運転手がこの店を覚えていて、忘れ物を届けに来た。お礼を述べて、一緒に食事でもと誘ったが、彼は仕事に戻っていった。

 最近、海外に出稼ぎに行った人が、そのお金を元にタクシーの運転手を始める人が多いと聞く。うまくいくとサラリーマンよりたくさんのお金が手に入るからだ。そうした海外組の人たちは、その国で倫理、道徳を学んで帰ってくるため、正直な人が多いという。

 国内経済が成長、発展していないため、海外に働きに出て家庭を養っているというやむを得ない事情もあるが、海外就労者が「国家の英雄」と持ち上げられるのも、こうした人たちが多くいるからだろう。


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