米国・ニューヨーク在住
内藤 毅
ウッドチャック騒動記
いっとき、家の近辺で夜中になると怪しい物音がするようになったことがある。何者かが庭の片隅でごそごそと動き回る気配や、風もないのにヤブや草が「ざわざわ」と揺れる。ひどいときには、立て続けに「ぱーん」「ぱーん」と植木鉢が割れる。
なんだろうと思って、窓から外をのぞいても何も見えない。しかし、物音が聞こえるときは決まって、どこかで「クルルルル」と得体の知れない鳴き声がする。翌朝、庭に出てみると、庭の土が掘り返され、ゴミ箱が倒されていた。
さて先ごろ、わが家一帯は集中豪雨に見舞われた。雷は近所に落ちるわ、古い樹木が根元から倒れるわの大騒ぎだったが、幸い私の住むアパートは何の被害もなかった。翌朝、通りに出てみると、一緒にいた息子が「あっ」と声を上げて道端を指差した。そこには、茶色い猫らしい動物が横たわっていた。
何だろうと思って調べてみると、ウッドチャックというリス科の動物。米国ではグラウンドホッグの名で親しまれ、森の中に生息する。しかし、人に慣れたものは、人家近くに出没する。さては、先日の物音の主はこのウッドチャックだったらしい。
「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」。しかし、友人の話に、少々ぞっとした。「かわいい顔してるけど、ときどき狂犬病にかかった奴もいるんだ。死んでたのもそうじゃないの。かまれなくてよかったね」