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エジプト・カイロ在住
鈴木眞吉

十字軍彷彿させる祭典

 以前、少し触れたが、エジプトの首都カイロから南へナイル川に沿って約三百キロさかのぼったメニヤの街の近郊に、デイル・アブ・ヒンニスという、父ヨセフ、母マリヤ、幼子イエスの聖家族がヘロデ王の迫害を逃れて立ち寄ったといわれる村がある。

 この村の全家族がコプト教徒で、各家に十字架や聖画が門や窓、屋根の上などに立っている。村では年に二回祭典があるが、七月三日の祭典に参加してみた。

 何よりも驚かされたのは、ナイル川をはさんで向かい側にあるマラウィの町から、祭典に参加する信徒たちが、十字架ののぼりを立て、十字架をデザインした衣服をまとい、聖家族などの聖画を掲げて続々と川岸に集まる姿だ。老若男女それぞれが聖句を口ずさみ、聖歌を歌う姿は、九百年前の十字軍をほうふつさせる。

 一団ごとに、渡し舟で川を渡る様子も見事だ。主教たちが乗り込む船の帆には、聖家族の絵が大きく描かれ、雰囲気を盛り上げている。川岸の数千人の信徒たちが、主教の到着とともに列をなして約四キロほどを会場に向かってパレードする。沿道の家々からは、女性や子供たちが総出で出迎え祝福する。

 ここには、ローな帝国や、イスラム教による迫害時代に使用した地下教会や信徒の隠れ家が、山の陰に掘られ、洞くつとして無数に残っており、迫害の厳しさを現代に伝えている。歴史の重みを実感できる場でもある。


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