エジプト・カイロ在住
鈴木眞吉
イスラム世界の近代化
二月下旬から三月初旬にかけてエジプト治安当局は、首都カイロから約四百キロ南方のアシュート県エルナヒーラ村を包囲し、同村の住民との衝突で約二十人が死亡、三十人が負傷した。同村にはハナフィ家族を中心にした部族が住みつき、部族全体が武器の密輸と麻薬の商売を行っていたとされる。治安当局は、軍用車両百五十台を投入し、軍用ボート三十隻で島に渡り、六千人の部隊を組んで、軽機関銃などを使用して攻撃した。アラブ紙は、さながら戦争が始まったようだと報じた。部族側は住民約二百人を人質に取って抵抗、村の周辺にガズボンベを置くなどして徹底抗戦したが、結局村の責任者らが逮捕され、抵抗運動はやんだ。
この事件に限らず、新聞の社会面をにぎわす事件の中に、兄弟や親子、親族、友人など、何らかの人間関係を持つグループが共犯者となって起こすケースが目立つ。法に触れるとは知っていても、情の絡む人から頼まれればそれを断りきれず、共犯者となってしまうようだ。
イラクでも部族のまとまりや部族長の影響力の強さが指摘されている。アラブ・イスラム社会全体が家族、氏族、部族、宗教の枠を超えきれないようだ。民主主義と法治国家の概念がどこまで根付いて、近代化できるのか? イラクは、アラブ・イスラム世界で最も民主的な憲法を制定したが、アラブ世界の近代化は容易ではない。