米国・ニュージャージー州在住
アンダーソン京子
停電で味わった安らぎ
カナダから米東北部の広範囲にわたって北米史上最大の停電が八月十四日午後四時半ごろ(日本時間八月十五日午前五時半ごろ)に発生した。
米国では停電は頻繁に発生する。だから、最初停電になっても誰も慌てなかった。「ああ、いつものか」ぐらいで終わった。しかし、二時間待っても直らないので、仕方なく帰宅することにした。車の中で、ラジオのニュースを聞くまで事の深刻さに気が付かなかった。
9・11のテロ事件以来、ニューヨーカーたちは訓練されたのか、皆助け合いながら黙々と歩いた。裸足で歩く者もいる。ブロンクスやクイーンズなどに三、四時間をかけて帰宅した。
ニューヨーク市では慣れない暗闇と使えない交通信号機で動員された警察官が一万人、非常時の電話件数が八万件、エレベーターが途中で停止、その救助が八百件、火事発生は三千件(原因はろうそくによるもの)。死者は火事のショック死が一人と報道された。それでも、人々は不平を言うこともなく事実を受け止め、ともに助け合いながら苦境を乗り切った姿に私は感動した。
自宅では蒸し暑い夜、家族とともにろうそくと懐中電灯の光で、ラジオ放送に聞き入ると、なぜか家族だんらんの良き一時となった。それは多くの家庭が同様に味わったようだ。停電がもたらした、意外な平和の一時であった。