エジプト・カイロ在住
鈴木眞吉
9・11後のイスラム回帰
カイロ大学を卒業したばかりのある女性が、最近のエジプトでのイスラム教回帰現象について話してくれた。それによると、大学内はオープンで、服装や髪形、化粧に至るまで自由に楽しんでいたのだが、二〇〇一年九月十一日の米国同時多発テロ事件以来、学内でもイスラム教回帰が進み、スカーフをかぶる学生も増えたという。頭から全身真っ黒な衣服で覆う学生たちは以前、急進的イスラム教徒として学内に入れなかったが、最近は許されている。
イスラム世界で、歴史的にイスラム教回帰現象が現れるのは、国家が危機的状況に陥った時だった。エジプトでの近年の回帰は一九六七年、ユダヤ教国家イスラエルとの第三次中東戦争で完敗し、敗北の原因は、自分たちがイスラム教をないがしろにしたことへの神からの罰ととらえることからだった。米国同時多発テロ後の回帰は、米国や西側世界をはじめ、全世界がイスラム教批判を強めたことへの防衛意識とみられている。
ただ若い女性たちには、以前楽しんだ自由は捨てがたく、テレビで頻繁に放映される一九五〇年や六〇年代の映画を観賞してうっ憤晴らしをしている。また、最近開局された新しい欧米のチャンネルや、音楽や踊り中心の番組に人気が集中、自宅で見られない女性は衛星テレビのある友人宅で時間を過ごしている。外的締め付けは心の自由を触発しているのだろうか。