タイ・バンコク在住
内藤 毅
「水掛け祭り」の犠牲者
ソンクラーンと呼ばれる行事は、タイの旧正月四月十三日から十六日の四日間にかけて行われる。同国最大のこの行事、「水掛け祭り」の別名通り、現地の若い男女や欧米人旅行者が水鉄砲やバケツでお互いに水を掛けあう。その姿は、まさしくらんちき騒ぎそのものである。
バンコクでは、水掛け合戦となる広場や一部の通りだけでなく、子どもたちが街のあちこちで道行く人や自動車、バイクなど、無差別に水をぶちまける。かくいう私もこの時期、何度か子どもたちの「爆撃」を受け、いまだ、ずぶ濡れになる運命を逃れきれないでいる。
さて、このソンクラーン、実は年間で最も交通事故が多い時期でもある。日本の年末年始同様、祝賀ムードが深酒をあおり、ふらふらになって車のハンドルを握ったり、バイクにまたがる運転者が多く、事故が多発する。今年は約四万二千人がこの種の事故で重軽傷を負い、六百十二人が帰らぬ人となった。
これは一時間ごとに約四人が死亡している計算で、ある新聞のコラムニストは「イラク戦争やSARS(新型肺炎)より怖い」と述べ、「国連決議でタイに経済制裁をすべきだ」と笑えないジョークを飛ばしていた。しかし、深刻なのは数だけでなく、重傷を負ったり、死亡している被害者の三分の一が十三歳以下の児童という点だ。一年で最も楽しみにしていた日に命を失うのは、あまりにも悲しい。