韓国・京畿道九里市在住
志田康彦
福のある食べ物 ビビンバ
日本人の夜食といったらラーメンだろうが、韓国人はビビンバではないだろうか。
テレビドラマで大きなボールにご飯と残り物の総菜やキムチなどを入れておいしそうに食べるのを見かける。ごま油の香ばしいにおいが鼻を突き、唐辛子みそで赤く染まっていくご飯が食欲をそそる。このごま油こそ野菜とご飯の潤滑油として働き、ビビンバになくてはならないものだと私は思っている。
ビビンバといえば全州石焼きビビンバが有名だ。ジュージューという音を聞いただけでもよだれが出る。石焼きビビンバは今や韓国料理の代名詞でもあるが、歴史は意外に浅く、一九七〇年代である。もともとビビンバは真ちゅう製の器を使用し、庶民だけでなく宮中にも出されていた料理だ。
ビビンバの由来をさかのぼると、昔は骨董飯と呼ばれ一八〇〇年代末に「是議全書」という書物に初めて登場する。戦の食べ物だとか、大みそかの夜に残ったものを次の年に残さないように食べたのが始まりだとか、いろいろな説がある。
また、祭事(先祖の亡くなった日を祭る)に、供え物とご飯を混ぜて食べたのが始まりともいわれる。韓国では供え物を食べることを“飲福”という。福を飲むという意味で、ビビンバ誕生がこの通りなら、まさに福のある食べ物なわけで、人々が好きになるのも無理がないなあと、妙に納得した。