イスラエル・テルアビブ在住
野中 直
避難慣れしている国民
米国のイラク攻撃が始まる前日、イスラエルでは全国民にガスマスクを組み立てて、装着の練習をしておくようにと通達があった。各自がどこに行くにもガスマスクを携帯するようにとの指示だ。いよいよ戦争だ。この物々しいガスマスクを見ると、否が応でもその雰囲気が漂う。
ところがイスラエルの国民は至って冷静だ。皆が何気なくガスマスクの入った箱を首からカバンのように下げ、街中を行き来している。学校に行く子供たちでさえ、皆ガスマスク持参で登校だ。
イスラエルの人たちがこのような事態に慣れているのは、湾岸戦争の経験があるからだ。四十発ものミサイルが飛んでくる中を生き延びてきた。どこからが危険で、どこまでが安全かがわかっているようだ。
特にイラクがイスラエルに向けてミサイル発射をするとしても、準備の時間があり、その間にテルアビブ以外に避難することを住民は理解している。また、ミサイルがどこの地域に落ちるか、あらかじめ連絡が来るので、該当地域の住民だけが避難すればいい。
そしてミサイルの弾頭に化学兵器がついているかどうかで、シェルターに逃げるのか、ビニール張りの部屋で過ごすのかを知っている。政府からの通達や新聞の情報には念が入っている。
現在イスラエルに対する危険性はどんどん低くなっているが、歴史の古くから避難慣れしている民族には頭が下がる。