タイ・バンコク在住
内藤 毅
日本人を狙う宝石詐欺
ここ数年、バンコクでは日本からの観光客を狙っての宝石詐欺事件が立て続けに起きている。昨年一年間の件数は八十三件。これは、日本大使館の注意勧告や旅行会社、旅行者がよく利用するインターネットのホームページなどでその手口が紹介されたため、一昨年よりも五十件減っているが、それでも多い。
宝石詐欺は、観光地などで三輪車タクシーの運転手と悪質な宝石店がグルになって、被害者に二束三文の価値しかない宝石を法外な値段で売りつけるもの。被害者の体験談を聞くと、手口は稚拙なもので、「なんで、そんな話に引っかかるの」という思いがわく。また、被害者の多くが二十代前半の若者である。
私も年に一度は日本に帰るが、電車や地下鉄、夜道の一人歩きはバンコクにいるときよりも恐ろしい思いをすることがある。また、バンコクの宝石詐欺に等しいキャッチセールスが東京や大阪などで客引きをしているのを見ると、日本も東南アジアも似たり寄ったりではないかという気がしてくる。
結局、日本の若者が詐欺に遭うのは、世慣れしていないというよりも、「気の休まる暇のない日本から脱出できた」解放感、またこの感覚が拡大し「東南アジアは日本より安全」という錯覚に陥った結果ではないか。旅行者は、タイという国が対応の仕方で「楽園」にもなるし、「地獄」にもなることを知るべきだろう。