南ア共和国・ヨハネスブルク在住
長野康彦
通貨強いのに物価上昇
一昨年、暴落して低迷を続けていた南アフリカの通貨ランドが、今年は強くなってきた。昨年後半から盛り返し、今月は一ドル八ランド前半まで上昇、ここ数年来の最高値を記録した。政府はますます経済政策に自信を深めている様子だ。
しかしその半面、一向によくならないのが国民の生活。通貨が下落し、いっせいに輸入品の値段が跳ね上がった一昨年、昨年に比べ、今年はランドが強いのに、物価が上がる一方なのはどうも解せない。
タイミング良く、あるラジオ番組で「ランドが強くなったのに物価は下がらない。一体誰がもうけているのか?」という討論をしていた。有識者やリスナーの意見を交えての内容だったが、結局、誰も明確な回答を示せなかった。
富裕層の国民はまだしも、物価の上昇に翻弄されるのは、いつも貧困層だ。生活に最低限必要な食糧すら買えない。
貧困層に多い黒人系国民に話を聞くたび、「アパルトヘイト時代の方がよかった」という答えが返ってくることが多い。当時のランドは米ドルよりも強く、経済は安定していた。働き口もあった。人種差別はいやだが、治安も今とは考えられないほどよかったという。
アパルトヘイトが終えんし、民主化という自由を得たものの、直面する経済困窮に、国民の心は複雑なようだ。