タイ・バンコク在住
内藤 毅
高層ビルを襲った地震
日本を訪れたタイ人に感想を聞くと、必ず出てくる話題がある。地震だ。あるタイ人は「ホテルのベッドで寝ていると、突然部屋全体が揺れだしたので、ホテルの倒壊事故かと思った」と笑い話めかして話した。
さて、バンコクでは先月下旬、スマトラ島で発生した地震によって、高層ビルが林立するオフィス街を中心に大きな揺れを観測した。めったに地震が起こらないバンコクでビルが揺れたのだから、バンコクっ子たちは慌てに慌てた。ある会社員は電話の最中、体がふわふわする感触に、「めまいがひどい」と医務室に行こうとしたという。
その後、これが地震と分かり、高層ビルで働いている人々が次々に屋外に避難。人々は警戒警報が解かれるまで、不安そうな顔でビルを見上げていた。
しかし、これを不思議そうに見ていたのが、ビルの低層部で働いている会社員や路上屋台のおじさん、おばさんたちだった。揺れていたのは、ビルの高層部だけだったというわけ。
地層学者によると、バンコクの地層はたい積泥土でできており、高層ビルはこの上に立っている。このため、今回ちょっとした揺れが増幅されて、ビルの上層部分が大きくしなったとされる。実は私もこのとき、高層ビル街を歩いており、ビルからぞろぞろと人が出てくるのを目撃した。この真相を知ったのは翌日の朝刊だった。幻の地震とはこのことをいうのだろう。