タイ・バンコク在住
内藤 毅
暴れた「ストリート象」
バンコクには約百頭の「ストリート象」がいる、と書くと、野良犬ならぬ「野良象」が街角に出没する姿を思い浮かべるかもしれない。しかし、このストリート象とは、森林で材木の切り出しや伐採作業に使われていた象が、不況で仕事を失い、象使いとともにバンコクなどの都会に降りてきたものをいう。
小山のような巨体を揺すりながら、夜な夜な繁華街に出没し、エサ代と称して物ごいする姿は、哀れを誘う。また、活動する時間帯が深夜だけに、交通事故に見舞われるケースも。バンコク市民からは同情よりも、危険視する声が高まっている。
今月、こうしたストリート象のうち、一頭の雄が街中で凶暴化し、タクシー一台を破壊、小象を襲う事件が発生した。現場は昼夜、人でごった返している学生街。新聞報道などによると、この象は数時間暴れた後に、麻酔銃を撃たれ、取り押さえられたが、一つ間違えば大惨事も考えられただけに、今後ストリート象への風当たりはさらに厳しくなるとみられている。
しかし、この象は、慢性的な空腹に加え、発情期に入って極度に気が立っていたといわれる。エサ用のわずかなバナナだけでは、巨体を維持していくには無理があろう。陸上最大の哺乳類がプライドを傷つけられた揚げ句の凶行だったのでは、と感じられてならない。ストリート象保護に向けた抜本的な解決が望まれる。