タイ・バンコク在住
内藤 毅
巧妙な“下水処理”詐欺
バンコク生活は四年近くになる。少しはタイでの自己防衛を身につけたような気がしていたが、最近、こちらの常識を超える「事件」が起きた。
ある祝祭日、ゆったりした朝を送っていると、筆者の住む長屋に重トラックの地響きが聞こえてきた。「何の騒ぎ?」と窓の外を見ると、汚水処理車(バキュームカー)が狭い路地に入ってきている。見るところ、この界隈の下水設備・状況を調べに来たようだ。
ところが、業者は隣家にホースを搬入しはじめたではないか。どうも、おかしい。長屋の下水設備はかなり整っていて、汚水処理を受ける必要はないはず。そうこうしているうちに、とうとう業者がわが家にやってきて、門を開けようとしている。「やばい。家に入ってくるぞ」と身構えていると、正義の味方よろしく、どこからか大家がやってきた。
「あんたたち、なにしてんの?」。彼女は怒りを隠さず、業者に突っかかった。「ここは下水処理車なんていらないよ。とっとと出てお行き」。すると、業者らはそのまま煙のごとく退散してしまった。
後から、隣人に話を聞くと、業者はトイレを調べ、「汚物が詰まっている」と言い放ち、家の中に搬入したホースで作業。現金千バーツ(約三千円)を徴収したという。この隣人はれっきとしたタイ人で、「こんなことは初めて」と怒りも半分、あっけに取られていた。