世界の街角
世界の街角
navix
email

韓国・ソウル在住
原田 一

日本のビザ取得に殺到

 私は帰化したため、日本人として最後に日本大使館に行ったのは、もう四年前になるが、先日、今度は韓国人として日本へのビザ申請のために訪れた。

 かつて日本大使館は通りに面した敷地の中にあり、反日デモに備えて警備も厳重だったが、今では旅券・ビザ業務に関しては、他の会社も入っているビルの中に移転している。

 しかし、ここを訪れる人が異常に多いので、エレベーター一台が七階の日本大使館専用になっていた。朝は、エレベーターに乗るのにも列を作って待たなければならないほどだ。

 さて、ビザ申請の部屋に入ると、あまりにも多くの人がいるのでびっくりした。書類を書く机はたくさんあるのだが、入り込むすき間もない。こんなにも日本に行こうとする人が多いのか。

 聞くところによると、ビザもかなり緩和されたらしく、日本に行った実績があれば、九十日の滞在が可能で、五年間有効のビザがもらえるという。ワールドカップを控えての措置であろうが、手数料もかからないし、写真とパスポート、戸籍謄本などの書類を提出するだけで、明くる日には受け取ることができる。これだけの人が殺到するのも理解できた。

 去年のアメリカのテロ事件で、飛行機の予約が激減し、一時は旅行会社も非常事態であったが、これを見ると、日本行きに関しては回復しているようだ。


南ア共和国・ヨハネスブルク在住
長野康彦

通貨に見る複雑な背景

 南アフリカ共和国に来て、最初に軽いカルチャーショックを覚えるのが「お金」。通貨といえば、どの国でもデザインにはその国の偉人や歴史的人物が用いられるのが普通だが、南アフリカの通貨ランドには人間の顔は一つもない。五種類ある紙幣はすべて動物。九種類ある硬貨もすべて動植物でデザインされている。

 最初のころは何も分からなくて、ただ「おお、さすがは野生の王国。アフリカらしくていい」と単純に思っていたけれど、実は背景に複雑な事情のあることが分かってきた。

 多人種国家のこの国では全人種が納得する偉人というものが存在しないのだ。白人系国民の間では尊敬される人物でも、黒人にとっては恨みの対象である場合が多いし、逆もまたしかり。民主化後の人種融和政策をすすめていく上で、あらゆる差別をなくすため、通貨にも人物ではなく動植物が起用されたというわけである。

 硬貨には、もう一つ面白いことがある。日本の硬貨には「日本国」と必ず刻印されているが、一九九六年以降に発行された南ア硬貨は、お金の種類によって書いてある言葉が違う。南アには英語、アフリカーンス語をはじめ、十一の公用語があるため、公平を期してそれぞれの硬貨に違った言語で「南アフリカ共和国」と書いてあるというわけ。通貨一つとってみても、その国の事情がくみ取れる。


ドイツ・ベルリン在住
富田武史

なかなか慣れないユーロ

 欧州単一通貨「ユーロ」の一般流通が始まって一カ月を過ぎた。初めて新通貨を手にしたときはだれもが興奮し、旧通貨に対するノスタルジーにひたるいとまもなかった。だが、人の精神構造は思ったほど柔軟でないようだ。

 新通貨の生活になかなか順応しきれていないのが現実だ。一度でも硬貨を手にした人ならば分かるだろうが、十セント、二十セント、五十セントは色が同じなうえに、大きさも似ている。一ユーロと二ユーロもサイズが似ている。そのため、硬貨を選ぶのに時間がかかり、買い物時の支払いは手間を取ってしまう。実際に、高齢者がレジ係員に支払いを手伝ってもらっている姿をこれまで何度も見かけた。観光地で買い物をしている錯覚に陥りそうになる。

 買い物をする際、いまだにマルクに換算して考える人が多い。筆者もその中の一人だ。そうしないと、トリックにまんまとはまってしまうのだ。たとえば、「Tシャツ一枚が十マルク(約六百円)とは安い」と思って買うと、実は十ユーロ(約千二百円)だったというケース。筆者の知る人のほとんどは、ユーロのトリックの犠牲者だ。

 だからこそ、知人に値段を言うときも、ていねいにマルクに置き換えて話してしまう。在独歴が数年しかない筆者でもこうだから、一生マルクとつきあってきた人々にとってはもっと大変な問題であろうと容易に察することができる。


HOMEBACK