世界の街角
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南ア共和国・ヨハネスブルク在住
長野康彦

祭りのような反対運動

 南アフリカは労働運動の盛んな国だ。労働組合の力が強くまた労働者同士の結束が強くて、一年中、そこかしこで何千、何万人規模のストライキ、デモ行進が見られる。

 日本だと怖い顔をして「何々反対!」とこぶしを振り上げるのが以前は見慣れた光景だったが、こちらはまるで違う。みな踊りながら、楽しそうに現地語の歌を歌い、街を練り歩く。初めて見る人にはあたかも何かのお祭りのようだ。

 これも国民性の違いだろう。なにごとにも真剣でまじめな日本人は、反対運動に笑顔など見せないが、こちらはとにかく人がたくさん集まることが楽しいようで、歌と踊り、笑顔と陽気な叫び声で反対運動をする。

 日本では自殺者が年間三万人を超えるそうだが、こちらで自殺の話などほとんど聞かない。むしろ、貧困や疾病で生きたくても生きられない人々がたくさん存在する。

 日本を離れてみると、日本の良さと同時にさまざまな問題が見えてくる。彼らの陽気で「ハクナマタダ(なんとかなるさ)」の精神を日本人が少しでも持てたら、自殺者も減ることだろう。

 南アフリカでは今後、民営化政策で、公共部門が次々と民営化される予定である。「民営化=リストラ」ととらえる労働者たちが、ストライキやデモ行進でにぎやかな歌と踊りを披露してくれる日々がしばらく続きそうだ。


イスラエル・テルアビブ在住
野中 直

不安を感じる建築技術

 イスラエルには地震がない。建築物は古いものだと建国以来五十年以上たったものもあるが、この建物を支える柱はとてつもなく細い。地震国から来た日本人にとっては、住むのが恐ろしいくらいである。

 きっと震度3で崩壊すると自信を持って言える。例えば一般的な五階建てのアパートの一階は駐車場として使われる場合が多いが、その駐車場は何本かの細い柱だけで支えられている。

 イスラエルの人はそれでもどんどん自分の家を改造していく。壁をぶち抜いて二つの部屋を一つにしたり、また壁を作って二つの部屋にしたり、あるときは柱さえも抜いてしまうこともあるようだ。何カ月か前、改造したばかりの結婚式場の床がフロアごと抜け落ち、大惨事になったこともある。

 それでも高層ビルは大丈夫だろうと最近まで思っていた。しかし、注意して工事中の高層ビルを見ると、鉄筋を使用して周りをセメントで固めているが、鉄骨は使っていないようだ。これではテロ事件が起きたら,ビルはひとたまりもないだろう。

 南の方に行くと、地盤が急に盛り上がり、きれいな地層を見せる観光地がいくつもある。これは何千年かに一度くらいは地震があったことを示している。自然を無視して安易に建物を建て続けていくと,必ずしっぺ返しが来る。遺跡がいつも地中から出てくるのは、地震で地下に街が沈んだ証拠ではないか。


エジプト・カイロ在住
鈴木眞吉

バス乗車賃1ポンドの重み

 先日、アレクサンドリアに取材に行ったときのこと。カイロ発のバスが、普通は乗車賃が二十ポンド(六百六十円)だが、当日の時間帯のバスは十六ポンド(五百三十円)だった(カイロ−アレクサンドリア間は約二百四十キロ)。

 これはもうかったなと思ったが、何と車内は薄汚く臭い。また案内役の男性の服装も貧弱で汚いし,におった。

 ところが帰りのバスは全く違った。デラックスできれいな車内、きれいな女性が案内を務め、これが二十ポンドだった。

 カイロには数種類の乗り物があり値段が違う。市内を走るバスの中で、最も運賃が安いのは十ピアストル(三円)で、古い大型バス。次は二十五ピアストル(七円)で、小型の古いバス。もちろんギューギュー詰めだ。

 次は五十ピアストル(十六円)で小型のバスだが、わりあい新しく、値段が高い分ゆったりと乗れる。一ポンド(三十三円)だと車は小型だが、座席に座れる。

 これが二ポンド(六十六円)となると、冷房つきのデラックスな大型観光バスへと急に飛躍する。一ポンドの違いでかくも違う。これは夏には実にありがたく、こんなぜいたくをしていいのかなとさえ感じてしまう。

 エジプトの一人あたりの国民総生産が千四百ドル(十七万五千円)で、月に直せば一万五千円弱の世界では、人件費が安くつくから結構ぜいたくなバスに割安で乗れるということが起こりうる。一ポンドの差は重かった。


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