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エジプト・カイロ在住 鈴木眞吉
落とし物を届けて表彰
エジプトの現地紙は最近、二人の専門学校男子学生が、日本人女性が落とした多額の日本円が入った財布を、落とし物として警察に届け出たことに対し、ポータブル・コンピューターを賞品として表彰されたことを大きく報じた。財布は無事、落とし主の日本人に届けられた。エジプトの教育相がこの行為を“善行”として表彰したもの。
エジプトで金銭を紛失したり、盗まれたりした場合は、永遠に返ってこないものと思われている。この“常識”(悪いイメージ)を覆す善行を、当局とマスコミが協力して大々的に宣伝したのだ。現地の邦人から聞いた話だが、エジプトでは、何かを拾った場合、アッラー(イスラム教の神)からの贈り物との認識があり、ポケットに入れることを,とくに気にしないという。
すべての出来事に神のご意志が働いているととらえる生活感覚は見事なほどに徹底している。日常のあいさつで使われる言葉の一つが「インシャ・アッラー」だ。「神のみこころならば」という意味なのだが、われわれ日本人としては、これを連発されると信じていいのかどうか迷ってくる。
例えば、誕生会に人を招待したとする。必ず「インシャ・アッラー」が出てくる。来てくれるのか、断っているのかわからなくなる。来なかったとしても神のみこころでなかったのだから悪気がない。こちらも責めようがない。
「インシャ・アッラー」は使うほうにとっては便利で、使われるほうにとっては迷惑に感じてしまう。でも現地の人々はお互いが使いあって平然としている。神にゆだねる信仰が泰然とした生活を可能にさせている。
米国・ニュージャージー州在住 アンダーソン京子
米国の自然美を再発見
最近、米国東北部に位置するバーモント州バーリントン市に行く機会があった。ニュージャージー州からニューヨーク州に入り、ただひたすら北上しアルバニー辺りから東に方向を変え、また少し行くと北上した。片道六時間半ほどのバスの旅であった。
バーモント州に入ると風景は、林からたくさんの馬や牛が放牧された農場に一変する。四月中旬だというのに、所々に残雪を残しながら限りなく広い農場が続く。時々サイロと一軒家の民家の固まりが点在し、背後には雪に覆われた山々が堂々とそびえていた。幹線道路と思われる二車線の道路には行き交う車がほとんどなく、ただ一直線に延びる,果てしなくまっすぐな道路を走った。「ここで車が故障したら大変だな」と余計なことを思いながら、三時間ほどのバーモントの田舎道のドライブを楽しんだ。
バーリントン市はカナダの国境に近く、ニューヨーク州とバーモント州の間にあるシャンプレイン湖に面し、アディロンダック山脈を背景にした美しい酪農地帯の都市である。州最大の都市ではあるが、高層ビルは一切見当たらない。オフシーズンのためか、ホテルには観光客が見当たらず静かだった。
今回の旅で米国が農業国家であることを確認し、米国の美を再発見できた。高層ビルに慣れ、交通渋滞も毎日経験する生活環境から離れて、自然の広大さ、雄大さをしっかりと感じとり、心の安らぎとすがすがしさを感じて帰ってくることができた。都会で失われたものが、まだまだ米国にはたくさん残され、これこそが米国の美であることを実感した旅だった。
韓国・ソウル特別市在住 竹井弘樹
南侵に備えた「民防衛」
十六日午後二時。何やら外が騒がしい。サイレンが鳴り、街のあちこちに設置してある非常用スピーカーからは、大きな声で何やらアナウンスが聞こえてくる。そうだ、きょうは「民防衛」の日だ。
民防衛の日は、サイレンがなってから約二十分間、救急車などを除き、車は一切動かない。本来は、道路の路肩に車を寄せて停車して、カギをつけたまま車から降りなければいけないらしいが、最近は車が多いので、サイレンが鳴った時のままの状態で,道路に停車している。何度か経験したが、いつ見てもなんとも物々しい光景である。
「民防衛」とは、日本ではあまり聞き慣れない言葉なのでインターネットで調べてみると、「敵の軍事的な侵略や、天災地変による人命及び、財産上の被害を最小限に防止するために、民間人により実施される非軍事的防衛行為」のことらしいが、実際には北からの南侵に備えた民間訓練である。
これは一九七五年から始まり、普通は十五日に行われる。韓国人の同僚の話によると、最近は数が減ったそうで昔、北朝鮮との関係が緊張していた時には、毎月のようにあり、学校では「民防衛」の教育時間があったとのこと。また、田舎ではこうした訓練が行われる機会は少なく、ソウルなどの都市では度々行うとも付け加えていた。
最近、韓国と北朝鮮との公・民の交流が盛んになり、さまざまな言論媒体を通じて、北朝鮮との関係が改善されている。南北統一が近づいている雰囲気を感じるようになった。しかし、実際に三八度線があり続ける限り、この「民防衛」はなくならないだろう。

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