世界の街角
navix
email

アルゼンチン・ブエノスアイレス在住
江頭利将

マラドーナはヒーロー

 日本でもマラドーナと聞いてだれのことかわからない人はまずいないだろう。ましてや彼の母国アルゼンチンでの知名度は、すさまじいものがある。たぶん、今後彼の知名度を超える人物は現れることはないだろう。それに単に名前が売れているというだけではないのが彼のすごいところで、まさしくヒーローとはこんな人なのかというくらいに人々は彼を愛したたえている。

 そんな彼が最近『おれはディエゴだ』という本を出版した。ディエゴとは彼の名前である。内容は、幼いころから神童と呼ばれてきたこれまでの道程を、ある作家が彼に代わりまとめたものだ。今まで表にならなかったいろいろな事実を告白しているという点で、斬新なのだそうだ。決して安くない十五ドルもするこの本が、今ベストセラー街道を走り続けている。

 しかし、そんな彼も良いことばかりではない。自他ともに認める麻薬中毒の彼は、現在心臓不整脈と憂うつ病に悩まされており、彼の神懸かりなプレーはもう二度と見られないのではないかと言われているほどなのだ。ところが、彼の人気はそれを超えてあまりあるのか、マラドーナが麻薬中毒だからといって彼の人気が落ちる気配は全くない。

 今でもあるスポーツ専門のケーブルテレビの「クラシックサッカーゲーム」では、彼の名プレーは定番となっているし、それを見たいがためにケーブルテレビの追加料金を払ってもよいというのだから、大したものだ。しかし、病魔は彼をむしばんでおり、悲しいかなアルゼンチンヒーローの選手生命はほぼ尽きたと言えるだろう。


ウルグアイ・モンテビデオ在住
薬師寺富代

子供の心いやす音楽会

 ウルグアイは今でこそ斜陽の国ですが、戦時中は国全体が富んでいて教育水準も高く、芸術家も多く輩出していました。ちなみにタンゴの神様といわれるカルロス・ガルデルはウルグアイのタクアレンボという地方出身です。

 あるとき子供のための音楽会を計画しました。変わった踊りを子どもたちに教えている人がいると紹介してくれた友人がいました。これがカティさんとの出会いでした。カティさんは白髪の美しい、そして元気なおばあちゃまでした。出演の申し出を大喜びで受けてくださり、総勢二十人の子どもたちを引き連れて来てくれました。

 その日の音楽会は大盛況でした。フィナーレを飾るカティさんのグループ「アマネセル」は、世界中の民族衣装を身に着けた子どもたちが輪になって踊るといったものでした。踊っている女の子たちは、親のいない子や自閉症の子や不良だった子や何らかの重荷を背負った子どもたちばかり。「こうやって輪になって手を握ったりおじぎしたり回ったりしていくうちに心の病が治っていくのよ」とカティさんは言います。

 カティさんは全くのボランティアでサークルを開いているのでした。そのアマネセルの踊りを見ているうちに民族や宗教を超えてすべての人間が家族のように丸くなる、そんな理想が伝わってきたのでした。訪れた人々の目も感動の涙できらきら光っていました。

 モンテビデオのはずれにセロの丘という有名な観光地があります。行くと、どこからともなく大勢の子どもたちがやってきて手を出しお金や食べ物をねだります。それでもウルグアイは南米の中で比較的裕福な国に当たります。


韓国・ソウル市在住
原田 一

波紋投げかける医薬分業

 医師と薬剤師の間で患者治療のための役割を分担し、処方および調剤内容を互いに点検、協力することで、不必要な薬や誤った投薬を防止し、無分別な薬の誤用・乱用を予防し、薬による被害を減らすという目的で、今年の七月から韓国で医薬分業が施行された。これで、病院で治療を受け、医師の処方せんをもらい、近所の薬局で薬を求めるようになった。

 しかし、これは薬の乱用という医師に対する不信感から始まったもので、医師側は衝撃を受けた。さらに病院では薬代の収入が減少し、二重の衝撃に。それにより、医師のデモや病院の休診という大きな社会問題にまで発展した。

 一方、薬局の側でも、当初は処方せんに記載されている薬剤が普及しておらず、大変不便であったし、そうでなくとも医師の処方せんがなければ簡単な風邪薬も処方できず、既成の薬品を販売するしかなくなったのである。

 私は、久々に風邪をひいて、行きつけの薬局に行き、この制度を忘れていたので戸惑った。いつもの処方はしてくれないので、既成の風邪薬を買って帰った。どうりで、薬歴管理のため新たにパソコンが置かれていた。慣れないおばんさんは大変そうだ。

 ところが数日後、今度は私が衝撃を受けた。テレビでニュースを見ていたら、日ごろ愛用しているかなり有名な風邪薬に脳卒中を引き起こす成分が入っており、販売中止、回収ということになったというのだ。

 病院では治療費が引き上げられ、保険料も上がる。そして薬局が遠くなり、薬も安心できないとなると、おちおち病気にもなっていられない。


HOMEBACK