2007年7月12日
参院選への視点
政治部長・黒木正博
問われる「関ヶ原」後の戦略、国政の安定を見据えよ
世上、今回の参院選は「天下分け目の関ケ原」決戦に例えられている。構図としては分かりやすいが、正確ではない。
史実の関ケ原では、東軍の徳川家康が西軍の将石田三成を破ってその後の覇権を確定したが、今回の参院選では、野党が過半数を獲得しても「天下」は取れない。引き続いて自民、公明の与党が圧倒的多数を誇る衆院の選挙で過半数を取ることが不可欠だ。
だからこそ、野党の最大政党である民主党の小沢一郎代表は「ここ(参院)で過半数を取れないなら私が代表をしている意味はない」と、代表辞任どころか政界引退も示唆して背水の陣で臨む決意を表明している。
退路を断って参院選での野党過半数獲得への並々ならぬ覚悟を国民に印象付けようという狙いだが、逆に言えば、これぐらいしか“切り札”がない同党の現状を示してもいる。与党には年金問題や相次ぐ閣僚の不祥事など「逆風」が吹き荒れているが、こうした“敵失”だけで民主党そのものへの「追い風」が感じられないことだ。
一方、安倍晋三首相は、参院選で敗北した場合の責任について「負けることを前提に話をする気はない」と言明を避け、通常国会で成立させた重要法などを挙げて「実績を訴えれば勝利できると確信する」と強調した。小沢代表とは対照的に、衆院での圧倒的多数を背景に余裕がまだあるとみるべきだろう。
安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を標榜(ひょうぼう)している。その要でもある憲法改正も参院選の争点にすると述べていた。これが、年金問題や閣僚発言などの処理に追われ、首相にとっては不本意な参院選の突入だろう。
問題は、参院選に当たっては、結果がもたらす選挙後の政局、もっと言えば国政の安定を見据えることが重要だろう。野党が過半数を取れば、参院での審議は相当混乱が生じよう。衆院での議決が優先されるとはいえ、安倍政権にとっては不安定な要素を含んだ政局運営が予想される。
「年金」や格差問題など内政の課題は重要だ。ただ、そうした内政の課題を遂行できる安定した政治の枠組みが不可欠である。
冒頭の「関ケ原」と、今回の参院選の違いはもう一つある。当時の日本は外国勢力に狙われる状況になかった。国内だけで相争っても所詮(しょせん)“コップの中の争い”にすぎない。
今は違う。北朝鮮の核問題はもちろん、テロの横行、中国の軍事力台頭など北東アジアの安全保障環境はわが国の生存に直接響いてくる。そのことを念頭に置いた判断が求められよう。