| 11面 読書 2007/04/08 | back |
『大人が絵本に涙する時』柳田 邦男著心を癒す選び抜かれた80冊大人が絵本を読む、というより大人こそ絵本を読むべきだという著者の主張の背景には、自ら絵本によって癒やされた体験がある。かけがえのない息子を失うという痛みに向き合う力を絵本が与えてくれたのだった。 そして、それが確信にまで高まったのは、講演を通じて同じような体験をした人々からの反響があったからである。 例えば、長年連れ添った夫を亡くした女性が娘から贈られた絵本を読み、それによって生きる力を得たという話。また、病気になって生きる力を失った友達を絵本の言葉を書き抜いて送ることで、その女性が立ち直ったケースなど、絵本にはシンプルながら人間の生命の本質に問い掛ける言葉があるという。本書は、そうした大人の心に響く優れた絵本八十冊を選んで紹介したものである。 「ケアする人、ケアされる人のために」「絵本は魂の言葉」「絵本の森を散策すれば」「絵本に月2000円を!」という項目の中で、それぞれにふさわしい絵本を取り上げている。 絵本とはいえ、そこには重い人生の真実が語られている場合もある。動物やファンタジーのようなものばかりではなく、生と死という現実を見詰めることをテーマにしたものがある。 「おにいちゃんがいてよかった」は、聖路加国際病院小児科部長が書いた絵本。おにいちゃんを亡くした妹の思いを描き、長年にわたって多くの小児がんの患者と家族を見てきた経験から、母親から無視されてしまう子どもの「トラウマ」を通して精神の癒やしを表現している。 絵本では、病気の兄にかかりっきりの母親から無視されていると思い込んだ妹を抱き締めることで、その気持ちをくんだ話になっている。それほど家族の一員を病気によって失うことは当人だけではなく、家族の絆をバラバラにしてしまうかもしれない危険性をもはらんでいる。 本書に紹介された八十冊の絵本は、著者によって選び抜かれた珠玉のような作品ぞろいで、これから絵本を読む人の最適なガイドブックとなっている。 羽田幸男
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