| 9面 解説 2007/04/08 | back |
【父と娘の時事問答】サブプライム/なんで経済の大問題なの?信用力の低い層向けローン延滞・焦げ付きが急増住宅市場全体、個人消費に影響も 綾 お父さん、最近、新聞経済面の見出しでサブプライムという言葉を見掛けるけど、これ何なの? 父 これは米国経済、ひいては世界経済の行方にかかわるキーワードだよ。 綾 そうなんだ。説明してよ。 父 いいよ。サブプライムは、正確にはサブプライムローンといって、信用力の低い顧客を対象にした住宅、自動車などの担保付き融資のことなんだ。米国で住宅ブームが続く中で、貸し付け競争によって審査基準が緩み、この融資が急増した。 米連邦準備制度理事会(FRB)によると、すべての住宅ローンに対するサブプライムローンの比率は一九九四年の5%から二〇〇五年には20%になっているから、昨年はもっと増えているだろう。 綾 すごく増えたのね。 父 住宅価格が右肩上がりで上昇し続けたから、行け行けどんどんのバブルが進行してしまったということなんだよ。サブプライムローンは借り始めてから数年したら、高金利になるにもかかわらず、信用力の低い層の多くがサインしたのは、住宅の担保価値が上昇していれば、借り換えによって金利を低く抑えられると見込んだこともあるからなんだ。 綾 でも、その見込み通りいかなくなったのね。 父 そう。昨年あたりから住宅部門は減速感が強まり、住宅価格の伸びも鈍化してきたから、多くの顧客は借り換えもできず、高金利に絶えかねて結局、返済延滞・焦げ付きが急増している。このままいくと、二百万人以上が差し押さえで家を失うという予測まで出ている。 だから、貸し手のサブプライムローンを扱っている住宅ローン会社はここ十二カ月の間に、少なくとも三十社が経営破綻(はたん)や他社への売却などに追い込まれている。このうち会社更生法の適用を申請したのは五社だけど、二日に申請したニュー・センチュリー・フィナンシャル(カリフォルニア州)はサブプライム専門の最大手。取引金融機関には大手がズラリと並んでいるだけに、衝撃が走ったようだよ。 悪循環が進んで、住宅市場全体が影響を受け、ひいては米国経済にかなりダメージを与えることが心配されている。「薄氷の上をスケートしているようなもの」と言うエコノミストもいるほどなんだ。 綾 悪循環って? 父 サブプライムの返済延滞・焦げ付きの急増を受けてローン会社は融資の基準を厳しくしているから、住宅を買おうという人は減る。つまり、需要は落ち込む。 グラフをご覧。二月の新築一戸建て住宅販売は二カ月連続で減少し、前月比3・9%減の年率八十四万八千戸。二〇〇〇年六月以来の水準にまで落ち込んでいるんだよ。 一方、サブプライムローンが払えず差し押さえられた家も市場に在庫として増えてくる。こうした需給の変化によって、住宅価格は下落していく可能性があるんだ。 すでに最近発表された経済指標では今年一月には、米国全体の平均住宅価格は少なくとも六年ぶりに下落に転じたという。メリルリンチは米住宅価格が今年10%も落ち込む可能性があると警告している。 綾 住宅価格がそんなに落ち込むとどうして良くないの? 父 それは、米経済の三分の二を占める個人消費が打撃を受けるからなんだ。 住宅ブームは個人消費に大きな恩恵をもたらしていた。というのは、住宅ローンを抱えている人たちは、住宅価格の高い上昇を背景にした住宅ローンの借り換えや住宅価格の値上がり分を担保に消費者が借り入れるローン「ホームエクィティーローン」などで可処分所得が増え、それを消費に回すことができたからだ。だから、住宅価格の下落は逆効果となり、個人消費に大きなマイナスになる。 あまりこんなこと考えたくないけど、最悪のシナリオは、「住宅価格下落→個人消費低迷→企業収益悪化・株安→リストラ・失業→住宅価格の一層の下落」という負のスパイラルに陥ることだ。こうなったら、日本への影響も大きいだろう。 綾 米国の議会や政府などは動いているの? 父 米議会はこの問題で頻繁に公聴会を開いている。また、米国の中央銀行FRBは先月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、場合によっては利下げもあり得るとのスタンスに転換している。米経済をソフトランディング(軟着陸)させることができるのか、バーナンキFRB議長は就任以来の最大の正念場に直面していると言ってもいいだろうね。 (原田 正)
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