8面 国際社会 2007/04/08 back

【アジア・亜細亜・ASIA】東南アジアでアラブマネー取込み競争、イスラム金融受け皿に

先行するマレーシア

金融危機教訓に金融安全保障にも一役

 東南アジアではシャリア(イスラム法)に基づくイスラム金融が活況を呈するようになってきた。イスラム金融とは聖典コーランの教えに沿った金融業を指す。シャリアでは金利を否定することから、金利の代わりに配当金という概念で“利払い”を行ったり、アルコールやたばこ、カジノ、イスラムで不浄とされるブタなどに携わる企業では運用しないほか、先物取引には手を出さないなどいろいろ工夫を凝らし、宗教的制約下での金融業を営んでいる。(バンコク・池永達夫)

 東南アジアではマレーシアやインドネシアを中心に二億人以上ものイスラム教徒が住んでいる。同地域でイスラム金融の立ち上げを急いでいるのは、これらイスラム住民の金融資産を取り込むことが主要目的ではない。むしろ、米同時テロやイラク戦争を契機に米国から中東に還流するオイルマネーを、イスラム金融を受け皿として自国へ呼び込んでいるのだ。

 金融は経済の心臓や血流にも匹敵する主要な機能を持つ。とりわけ十年前、バンコクに震源地を持つアジア金融通貨危機が、マレーシアやインドネシアなどを津波のように次々襲い、致命的なダメージを蒙った経験から、原油高騰で潤うアラブの資産を取り込む金融の受け皿をつくることで、金融のパイプを太くして金融面における安全保障対策をしっかりしておきたいという思惑もある。

 金融センターを目指しているシンガポール政府はこれまで、イスラム金融促進のための規制緩和を相次いで打ち出してきた。同国政府は、イスラム金融の融資手法である「ムラバハ」(購買代行)を利用した投資金融商品を認可するとともに、その優遇税制さえも付与している。東南アジア最大の総資産規模を誇るシンガポール開発銀行は三月、同国初のイスラム銀行設立の意向を明らかにした。

 さらにアラブマネー取り込みの一環として、シンガポール取引所(SGX)はイスラム株価指数「FTSE・SGX・アジア・シャリア一〇〇指数」を導入。中東やイスラム教の投資家も購入しやすいように、イスラム法で禁じた酒やブタ肉、カジノなどを扱う企業を除いてある。

 こうしたシンガポールに対抗意識を燃やしているのが隣国マレーシアだ。マレーシアでは、外貨建て取引を行うイスラム金融機関への法人所得税を免除するとともに100%の株式保有を認め、外貨建てイスラム証券への印紙税や源泉徴収税を免除するなど、優遇策を出している。

 こうした優遇策が功を奏し、マレーシアではイスラム金融機関が陸続と上陸している。二月には、マレーシアで初の外資系イスラム銀行が本格開業した。クウェート政府系のクウェート・ファイナンス・ハウス(KFH)がそれだ。さらに先月には、カタールのイスラミック銀行がアジアン・ファイナンス銀行をクアラルンプールに設立した。これでサウジアラビアを加えアラブ系銀行は三行がマレーシアへの進出を果たした。結局、マレーシアのイスラム銀行は、国内の八行とアラブ系銀行三行の計十一行となった。

 マレーシア政府は二〇一〇年までに、全銀行資産に占めるイスラム金融資産の割合を20%にまで高めたい意向だ。目指しているのは、アジアでのイスラム金融のハブ(拠点)であり、“イスラム国家”の特色を生かして国際金融センターとして活躍するシンガポールに対抗しようというのだ。

 さらに世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシアでも、国内銀行が相次いで金利を払わないイスラム口座のサービス内容を強化したり、教義に沿った投資信託を設定したりして金融商品を取りそろえ、イスラム系住民と中東のオイルマネー取り込みを画策した金融制度の確立に動き始めている。

 タイでもクーデター勃発(ぼっぱつ)で中断した格好になっているが、イスラム金融促進への取り組みが始まっている。東南アジアではマレーシアが原油高で急膨張したアラブマネーの取り込みで先行している格好だが、シンガポールやインドネシア、タイなどがその後を追い、これから本格的な競争に入ろうとしている。

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