両陛下、被災地に変わらぬ思い


復興途上の福島見届けられる

 天皇、皇后両陛下は9日からの福島県訪問を終えられた。在位中最後の全国植樹祭に出席し、原発事故の避難者や津波犠牲者の遺族らと懇談。退位まで1年を切り、なお復興途上にある福島の現状を見届けられた。東日本大震災から7年の今も、被災地への変わらぬ思いを改めて感じさせる御訪問となった。

 ◇休憩時間削り懇談

 9日、いわき市の復興公営住宅「北好間団地」では休憩時間を削り、東京電力福島第1原発周辺4町の避難者らと懇談。両陛下はこれまで、原発周辺住民とあまり話す機会がなかったのを気にしておられたといい、宮内庁の河南健侍従は「お二人のお気持ちが行動に表れていた」と話した。

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天皇、皇后両陛下はJR福島駅に到着し、手を振られた=11日午後、福島市

 10日は常磐道などでいわき市から南相馬市、相馬市へと「浜通り」を縦断された。「地震、津波、原発事故、風評被害の複合災害を体験した浜通りを両陛下に直接見ていただくのは大きな意義がある」と内堀雅雄県知事。帰還困難区域を通過し、第1原発から5・8キロの地点では車の速度を落とし、原発の方をじっと見詰められたという。

 式典は南相馬市の津波被災地で開催。「復興が進んでいる姿を伝えるため、どうしてもこの地で開催したい」という地元の希望がかない、式典までに雨はやみ、両陛下は最後の植樹行事を終えられた。

 ◇体調崩すも公務全う

 11日は震災2カ月後に訪れた相馬市原釜地区を再訪。雨の中、震災慰霊碑に白菊の花を供えられた。松川浦漁港の卸売市場では、試験操業が続く福島の水産業の現状を熱心に質問。津波犠牲者の遺族との懇談で両陛下は、消防団員だった息子を亡くした車いす姿の女性(77)の手を握り慰められていた。

 震災以降6度目の福島県訪問では、3日間の日程で車の移動距離が約280キロに上った。負担も大きかったとみられ、皇后陛下は11日朝時点で38・1度の熱があったが、その後も予定通り日程をこなされた。原釜地区では雨の中、天皇陛下が皇后陛下の手を取り、慰霊碑への階段を上り下りしていた。

 天皇、皇后としての東北3県訪問はこれで最後とみられ、福島駅前では名残惜しそうに何度も手を振っておられた。内堀知事は「被災された方々と直接お話をして慰め、力を与えていただいたことに心から感謝したい」と述べた。