両陛下、最後の植樹祭


帰還困難区域 速度緩め通過

 福島県を訪問中の天皇、皇后両陛下は10日午後、南相馬市の東日本大震災被災地で開催された第69回全国植樹祭の式典に出席された。来年4月末の退位を控えた天皇陛下と皇后陛下にとって、今回が最後となる。

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天皇、皇后両陛下は全国植樹祭で苗木を植えられた=10日午後、福島県南相馬市(代表撮影)

 式典に先立ち、両陛下は常磐道で東京電力福島第1原発事故の帰還困難区域を通過された。原発から最短5・8キロの地点では車の速度を緩めた。宮内庁によると原発は見えなかったが、両陛下はその方向をじっと見詰めておられたという。

 式典は津波で被災した雫地区の海岸防災林整備地で行われ、冒頭、震災犠牲者に黙とうがささげられた。天皇陛下はクロマツなど、皇后陛下はアカマツなど計6種類の苗木をくわを使って植え、津島マツなど計4種類の種をまかれた。

 続いて、両陛下が見守る中、皇居内で採取された種から育ったエノキの苗木が植えられた。苗木は復興支援として、2年前の開催地長野県から昨年の富山県、福島県へとリレーされた。

 両陛下は常磐道でいわき市から南相馬市に移動する途中、広野町の料金所に立ち寄り、広野、楢葉両町の町民らと懇談。皇后陛下は県立ふたば未来学園高校(広野町)3年の根本愛里さん(17)に「より一層町がにぎわうといいですね」と語り、楢葉中学3年の青田康佑さん(14)には「これから楢葉町をもっと明るくしていってください」と話された。

 南相馬市では、津波犠牲者25人の名が刻まれた雫地区の慰霊碑にも拝礼された。

 両陛下は11日、震災から2カ月後に訪れた相馬市の原釜地区を7年ぶりに再訪し、同地区や隣接する尾浜地区などの犠牲者207人の名が刻まれた慰霊碑に供花された。宮内庁によると、皇后陛下は過労により、11日朝時点で38・1度の高熱があったが、雨の中、予定通り慰霊を済まされた。