皇后陛下の繭糸で復元 国宝級絵巻、両陛下が御鑑賞


 天皇、皇后両陛下は21日午前、皇居・御所で、鎌倉時代の国宝級絵巻「春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)」の表紙や巻緒などを鑑賞された。絵巻の表紙などは、皇后陛下が皇居内の養蚕所で育てられた純国産種の蚕「小石丸」の繭糸を使って復元された。

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天皇、皇后両陛下は修復された鎌倉時代の国宝級絵巻「春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)」の表紙や巻緒などを鑑賞された=21日午前、皇居・御所(宮内庁提供)

 春日権現験記絵は約700年前に作られた宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の絹絵巻で、2004年に始まった修復事業が今年終了。特に傷みが激しかった表紙や巻緒などは取り外され、皇后陛下が育てられた小石丸の糸を使って新たに復元された。

 小石丸は繭が小さく飼育に手が掛かるため、一般の養蚕農家では生産されなくなった。皇居の養蚕所でも生産取りやめが検討されたが、皇后陛下が継続を御希望。その後、小石丸の糸は日本古来の絹糸として、織物や絵巻といった文化財の復元に役立てられるようになった。

 宮内庁は「繭の存続を決断され、大切にしてこられた皇后陛下の大きなご事績の一つ」としている。