「苦労されましたね」 両陛下、比日系人ねぎらわれる


 【マニラ時事】フィリピンを公式訪問中の天皇、皇后両陛下は28日、首都マニラのホテルで、太平洋戦争によって家族が犠牲になるなど苦難の道を歩んだ同国在住の日系人らをねぎらわれた。

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天皇、皇后両陛下は日系人の歓迎を受けられた=28日午後、マニラ(代表撮影・時事)

 懇談したのは、フィリピン日系人会連合会前会長のカルロス寺岡さん(85)、同会長のイネス・マリャリさん(44)ら日系人5人とその配偶者3人、在留邦人の計34人。

 日系2世の寺岡さんは戦争中、2人の兄が日本の憲兵隊とフィリピン人のゲリラに殺され、米軍の爆撃で母と弟、妹が犠牲となった。天皇陛下が「戦争中は苦労されましたね」と声を掛けられると、寺岡さんは「戦争ですから仕方がございません」と答えた。皇后陛下は「日系人のお世話をよろしくお願いします」と話された。

 寺岡さんは「夢のようなこと。光栄で言葉にできません」と感慨深そうな様子。祖父が米軍の爆撃で亡くなった日系3世のマリャリさんは「日系人の代表として出たのはお礼の言葉ばかりだった。私たちは日比の懸け橋。きょうをきっかけに、日比の相互理解などの仕事に励みたい」と述べた。

 懇談が行われたホテル前には、日系人80人余りが集まり、日の丸の小旗を振って両陛下を歓迎した。ダバオから来た日系2世の田中愛子さん(84)は「両陛下に会えて良かった。父親に会えたような気持ちで大変うれしい。涙が止まらなかったです」と話した。