悪口、醜聞で心がズタズタに


“拉致監禁”の連鎖(233)パート10
被害者の体験と目撃現場(19)
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後藤徹氏が描いた荻窪フラワーホーム804号室の間取り図。舞さんの部屋も同じ間取りだ。監禁された部屋はどちらもベランダに面し、家財も同じく小さな洋服ダンスとテーブルの二つだった。

 舞さんが、言葉をつなぎ話し出せるようになるまでに3日かかった。それから対話ができるようになった。

 すると、宮村氏は元信者数人を引き連れて、部屋にやって来るようになった。かさにかかってする話は、教義や教祖の批判、醜聞で埋まっていた。

 「原理講論の最初何ページかを読んで、すぐウソだとわかった。一番最初に『人生の目的を知るにはその原因である神を知らなければならない』と書いておきながら、次をぱっと開けると『原因的存在を知るには、被造物を見ないといけない』と二性性相の話が出てくる。こんなのインチキだ」「(教祖の言葉を扱った『み言』に)祈りは部屋の隅の暗いところでやりなさいと書いているが、聖書では暗いところで祈るのはサタンだとあるんだよ」「陽性と陰性で物事が二分されるなんてウソ。冷蔵庫が陽性なら陰性は何なんだ。オーブンレンジは陽性なのか陰性なのか」という具合だった。

 さらに、教祖周辺のスキャンダルになると、言葉もののしりや中傷を極めた。舞さんが「韓国で言われている御子息についての話は本当なんですか」と逆に聞くと、具体的にこれこれと詰めて問いを発したわけでもないのに、「ああ、全部本当だよ」と答えも雑駁なもの。それでも、事の真偽を確かめることもできないまま、それらの情報が頭の中に堆積していった。

 ある時は、両親に向かって「あんたの親は、こんなことをするなんて馬鹿だねー」と、暗に拉致監禁の事実を認めながら、あからさまに蔑んだりもした。舞さんは目の前で、親の人格が否定されるのを見て、いたたまれない気持ちだった。

 両親は、宮村氏の言うことに対しては御説ごもっともとばかりに平身低頭、ただうなだれて聞いているだけ。一切、逆らえないのだということがよく分かった。

 舞さんは一方的な教理と協会批判を聞かされ、ますます混乱してきた。

 そんな時「統一原理を考えついたのは金百文という牧師で、文鮮明ではない」という、教本の由来について話を聞かされた。「劉孝元(原理講論の執筆を手掛けた協会草創期の人)と文鮮明の間でどっちがメシヤをやるか、となった時、お前がやれとなってこっちがなったんだ」というような話までしてきた。とうとう、保っていた信仰が崩れ落ちた。舞さんは、統一原理は真理ではなく、教祖は偽メシア、自分は協会に騙されていたのだと思うようになった。

 「一方的に聞かされる話を鵜呑みに信じていいわけはない。もしかしたら、統一原理が真理かも知れない」と、舞さんは頭の片隅に追いやられた知性を働かせることもできたが、これ以上、宮村氏から話を聞かされたくない、もういいという思いが先立った。信仰を維持させようという力は萎えてしまっていた。

 悪口、醜聞を、これでもかというほどたたみ込まれ、心がズタズタに引き裂かれたのである。

(「宗教の自由」取材班)