厚労省、子宮頸がんワクチンの副反応報告の収集強化


 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に体の痛みなどを訴える人が相次ぎ、接種勧奨が一時中止されている問題で、厚生労働省は29日、副反応報告の収集を強化すると発表した。対象とする症状を拡大するほか、転院した患者の追跡調査も徹底する。

 厚労省によると、これまで医療機関に報告を求めていた症状は、急性アレルギー反応の「アナフィラキシーショック」など5症状で、接種後の発症期間も限定。その他の症状については医師の判断に任せていた。

 しかし、全身の痛みやけいれん、記憶障害などさまざまな症状があり、時間とともに変動するとの見解もあった。そのため、報告対象に「広範な痛みまたは運動障害を中心とする多様な症状」を明記し、発症期間も限定しないこととした。

 過去に受診した患者についても改めて確認するよう求める。患者が自分の判断で転院した場合でも、市町村と情報共有して転院先を追跡。途切れた場合には患者本人に連絡し、症状の把握を徹底する。

 さらに、ワクチン接種後の症状に対応できる「協力医療機関」を各都道府県に少なくとも1カ所設置し、近くで診療を受けられるようにする。

 子宮頸がんワクチンは昨年4月、公費による定期接種の対象となり、小学6年から高校1年の女子に接種の努力義務が課された。しかし、全身の痛みなどを訴える声が相次ぎ、厚労省は同年6月以降、勧奨を一時中断している。

 田村憲久厚労相は同日の閣議後会見で、「積極勧奨するか、定期接種をどう考えるかは、調査の内容を見た上で判断する」と述べた。

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 厚労省によると、今年3月末までにワクチンを接種した人は全国で338万人と推定され、このうち運動障害などの重い副反応の訴えが176件報告されている。

 潜在的な副反応の被害者はもっと多いはずと実態調査の必要性を訴え続けてきた全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の池田利恵事務局長は、厚労省の決定を評価しながらも「(接種者)全員を調査していくことが必要だ」と指摘。その上で、「被害者連絡会に登録している260人の被害者のうち、約6割が痛み以外の全身倦怠(けんたい)や記憶障害などの症状を訴えている。整形外科やペインクリニックで痛みを中心に診察する現在の医療体制では十分ではない」と述べ、適切な診療体制を整える必要性を訴えた。

(時事)