日本の平和と安定に寄与


各界から祝いのメッセージ

外交評論家 井上 茂信氏

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 日本のマスコミの足跡を見ると、まさに“風にそよぐ葦”であった。戦前は軍部の厳しい言論統制のもとマスコミは軍国主義一色に染め上げられていた。そうしなければマスコミは生き残れなかったからだ。戦後独立し、自由を回復するとともにその反動期を迎えた。すなわち、60年安保闘争に象徴される激しい左翼旋風のもと、日本のマスコミは内側では左翼労組のつき上げ、外側では学園を中心とする親ソ世論の高まりの中で、その報道姿勢は大きく左寄りの傾向を高めた。それが故に、「昔軍隊、いま総評」といわれるように戦後日本の権力の中心は軍国主義思想から左翼イデオロギーに移ったとされた。

 そのような風潮の中で世界日報が異彩を放ち、独自の存在価値を示し得たのは、同社が日本のマスコミを支配した左翼労組から完全に独立した存在であったことだ。それが故にこそ、公正中立な立場から報道と言論の場を提供し、日本の平和と安定に大きく寄与してきたことは高く評価されよう。

 旧ソ連の崩壊とともに、共産主義の脅威は去ったとされる。だが警戒すべきは共産主義に代わって日本を含む自由主義社会に新しい危機が高まっていることだ。社会倫理の崩壊がそれである。何が善か何が悪かの基準が曖昧となり、共産主義の脅威がなくても日本を含めた自由社会が内部崩壊する危険に直面している。

 世界日報社に期待されるのは、日本の良き伝統に根ざした社会倫理の基礎となる明確な価値観の提供である。正しい価値観を欠く限り、わが国はその存在と繁栄は危ぶまれ、指導国家としての資質を問われるからだ。その点、人間の尊厳を掲げて共産主義の脅威と戦い、さらに「倫理的家庭」を土台に「尊敬される国」づくりを目指してきた世界日報こそ21世紀をリードする言論機関として大きく期待される。